story 28 ページ28
あなたに手を伸ばしたいのに、
恋を失くす事に少し臆病になってる。
ーーー
『うわっ、ビックリした!?』
｢球場内広いから、
お前のことやし迷ってんちゃうかな?と思って。笑｣
『VIPルームのエスカレーターは、
1台だけやから、迷わへんよ。笑』
｢VIPルーム!?｣
『うん。笑』
｢生意気な奴やな。笑｣
あ、なんか遥輝と普通に喋れてる。
｢とりあえず車まで行こ。｣
『あ、うん。』
もともと待ち合わせしていたB1の扉を開け、
ピュッピュッ
と車の鍵を開ける音がした。
『この車、遥輝の?』
｢カッコえぇやろ?笑｣
『なんか…、野球選手って感じ。』
｢野球選手やもん、俺。笑｣
にしても、高そうな車。
『この車なんてゆーの?』
｢ランボルギーニ ウルスって車。
って、お前車のこと分からんやろ?笑｣
『ランボルギーニぐらいは分かるわ。笑』
｢お前は?あ、運転手いるか。笑｣
『いるけど、自家用も持ってんで。』
｢何の車?｣
『ベンツのG63ってやつ。』
｢マジで!?俺もそれ乗っとるわ。笑
ってか真似すんなや。笑｣
『真似してへんよ。
そもそも、遥輝が乗ってるなんて知らんかったし…』
それは間違いじゃない。
私の知らん遥輝のことが多過ぎる。
｢これから、
お互い知っていけばいいやん。
俺も、今のお前のこと全然、
知らんこといっぱいあるし。｣
『うん。』
｢とりあえず乗れ。｣
『あ、うん。
ってか、どこ行くん?』
｢目的先がないドライブ?笑｣
『ドライブって、
遥輝試合後で疲れてるんちゃうの?』
｢全然。北海道でも俺、
一人でよくドライブしてるし。笑｣
北海道で、一人でドライブか。
また一つ、私の知らない遥輝がそこにはいた。
2人会わなくなった日から9年と言う歳月は、
思ってた以上に、長過ぎた。
｢お前は?
俺の知らんお前は、今まで何しとったん?｣
『歌手?笑』
｢その、歌手になろうとしたキッカケは?｣
『…そんな昔のこと忘れた。笑』
ただ、
遥輝が私を歌手にした、ってだけのこと。
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作者名：haru | 作成日時：2019年7月26日 16時
