story 23 ページ23
違う、
それぞれの道を。
ーーー
｢西川くん!すまん。
試合中だと言うのに、少しだけ時間くれないか?｣
｢なんですか?
俺はあんたから会うなと言われて、
1度もAには会ってないですよ?｣
｢違うんだ。
逆に西川くんにお礼がしたくて、
だから、それを言いたくてな、
あいつを、Aを笑わせてくれて、
ありがとう。｣
｢なんですか?急に…
あいつに何かあったんですか?｣
｢いや、そういう事じゃない。
ただ、久しぶりにあいつの笑った顔を見たよ。
いつもの偽笑いじゃなく、心から笑うあいつを、今日…｣
｢……?｣
｢あいつは…、Aは、
昔、俺が西川くんにAと会うのをやめてくれ、
と、頼んだ事は知らない。
だけど、事務所的に恋愛は禁止だと言うことは伝えてある。
それも、本人も分かってる。
だけど、今日、西川くんの前で、
歌ってるあいつの姿見て、確信したよ。
Aにとっては、君は特別な男なんだなぁってさ、｣
｢俺は何もしてないですよ。
たけど、｣
｢…だけど、なんだ?｣
｢俺は逆に感謝してます。
あいつの居場所を見つけて頂いたことに。
あいつは、スポットライトとか、
光の中にいるのが似合う奴なんですね。
あいつと離れて、ただの1アーティストとして、
あいつを見た時、初めてそう思いました。
そう言うあいつを、俺はずっと見ていたいんです。｣
｢そうか、
確かにあいつは光の中が似合う女だ。
ありがとう、西川くん。
これからもあいつの笑顔の源になってやってくれ。
って、俺が言うのは可笑しな話だが、すまない。｣
｢いえ、気にしないで下さい。｣
｢すまなかったな、
急に呼び止めたりして、
それからこれがAの電話番号だ。
新しくなってるはずだから、
まぁ、暇の時にでも掛けてやってくれ。｣
｢…分かりました。｣
｢怪我にはくれぐれも気をつけてな、｣
｢ありがとうございます。
Aのこと、これからも頼みます。｣
｢あぁ、心配するな。｣
｢じゃ、俺そろそろ戻らないと…｣
｢あぁ、悪かったな。じゃあ。｣
｢じゃあ。｣
北原さんから渡されたAの電話番号。
…今更、何を話せばいいんやろう？
元気？久しぶり？と、か？
ガキか、俺は。
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作者名：haru | 作成日時：2019年7月26日 16時
