彼の口調 ページ39
【主人公】
夕飯は簡単に鍋にした。
結弦くんも一緒に少し食べるという。
「へー。うちもよく鍋するけど1人暮らしでもするんだ」
「1人用の鍋キューブあるしね。栄養摂れるし、朝野菜切っとけば帰ってから楽だし」
結弦くんに白菜とねぎをよそって渡す。
「熱いから気を付けてね」
「サンキュ。前から思ってたけど、Aさんって超ちゃんとしてるよね」
「へっ!?何が?どのへんが?」
「生活全般。いつ来ても部屋きれいだし、飯ちゃんと作るし、いろんなとこ。仕事もちゃんとしてるしさ」
仕事は今もうボロボロで干されそうなんですよ、なんて何となく言う気になれなかった。
「んーそうかな?なるべくチャッチャとやるようにはしてる。すぐやれば意外と時間かからないことがほとんどだし」
「あぁ、俺もそういうタイプだからすっげぇわかるわ」
結弦くんはそう言いながらふうふうして野菜を食べている。
「結弦くんって仕事すっごい速そう」
「スケートに関してだと速いけど、他はそうでもない」
「へぇってか、この部屋寒くなかった?暖房点けて待ってていいのに」
「平気。リンクなんてもっと寒いし。このブランケットかぶってひたすらスマホしてたから」
結弦くんは私のお気に入りの分厚いブランケットをポンポンとした。
確かにこれをかぶってれば寒くない。
「結弦くんってスマホでどんなの見るの?」
「大体ゲームとかツイッターとか、まぁエゴサかな」
「エゴサ?」
「ネットで自分のこと検索すんの。どう書かれてっかなとか」
ほら、と言って見せられた画面には結弦くんのインタビュー記事が載っていた。
それに関するネット民のコメントもある。
「そういうのって怖くない?」
「怖いけど慣れたかな。エゴサも仕事と思ってっから。世間が俺をどうとらえてるかとか、ああ言えばこう書かれるとか知らないと話になんないし」
「やっぱりイメージとか気にする?」
「めっちゃする。スケーターなんて人気商売だし、それによって来る仕事違うし、稼がないとスケート続ける費用さえも出ないし」
「結弦くんは心配ないでしょ?」
「まぁ今のところは。仕事選べる立場ではあるから環境には感謝してる。でも…」
「でも?」
「気ィ抜いてっとすぐ引きずり下ろされるよ」
何でもないように言う結弦くんを見て、この人はいつも何かと闘ってる人なのだと思った。
結弦くんは、羽生結弦であろうとしている。
それがすごくよくわかる、そんな口調だった。
119人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らっき(プロフ) - エミルさん» コメントありがとうございます(*^^*)今後はハラハラドキドキというかなんというかの展開(なんだそれ)になりますが、楽しんでいただけたら嬉しいです!お互い楽しんで書けるのが一番ですよね!頑張ります。 (2021年11月23日 21時) (レス) @page49 id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 自己満足で書いているけど、やっぱり読んでいる方がどう思われているのか気になりますよね〜。この先はハラハラしそうな展開でしょうか?移行後も楽しみにしていますね。 (2021年11月23日 10時) (レス) @page50 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - 鹿さん» この後徐々に何かが起こります!(そりゃそうだ)私ももっと日常の羽生さんを書いてみたいなーと思います。(願望)いつもコメントありがとうございます(*^^*) (2021年11月22日 22時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 何かが起こりそうな予感がぷんぷんする!続きめちゃ楽しみです^^羽生さんのご自宅での様子が垣間見れて幸せでした!確かに、読者さんの顔が見えないのはさみしいですよね^^ (2021年11月22日 16時) (レス) @page50 id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - 鹿さん» 相談相手、いると良いですね。スケートのことなら誰にでもサラっと聞いちゃいそうですよね。んでプライベートのことは話さなそうなイメージです。昌磨さん、平昌の時に比べるとメチャクチャ大人になってました。可愛いからカッコいいになりました。私の中で(笑) (2021年11月16日 8時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:らっき | 作成日時:2021年10月13日 14時