２人の恋２

東京の夜２ ページ16

「今日はどんな仕事だったの？」

「雑誌の取材とか、化粧品会社の撮りとか」

結弦くんは隣で炭酸水を飲みながら淡々と答える。

炭酸水を飲む時に喉仏が上下するのも…って私ってほんとどこ見てんだか。

自分がちょっと情けない。

「相変わらず凄いね。化粧品のＰＲできる男の人なんて結弦くんくらいだよ、きっと」

「俺は別になんも手入れしてないけどね」

「ほんとそれでこの肌ってすごい。私より１００万倍キレイ」

近くでお肌をじーっと見つめたら、素早く触れるだけのキスをされた。

結弦くんは微笑んでいるっていうより、私が照れるのを見て楽しんでる。

「サンプル貰ってきたからあとであげる」

「やったー！嬉しい！ありがとー」

恥ずかしくてどうしたらいいかわからないので、やたらとはしゃいだ声を出した。

「Aさんは？どうだったの、結婚式」

「料理も美味しかったし、いっぱい友達にも会えて楽しかったよ」

“結婚”については触れないように気を付けながら答える。

「帝都ホテルだっけ？やっぱり女の人ってそういう高級ホテルで挙式したいもの？」

うっ…。

人がせっかくそういう部分には触れないようにしてるのに何でこの人は！！

ひょっとして結弦くんってちょっと鈍感なところもあるんだろうか。

「そうねー、一般的にそういうところは人気なのかもね」

限りなく無難な答え方をした。

「Aさんはどうなの？」

えっ！？だからなんで！？

なんでそんな微妙な話を掘り下げてくんのよ…。

私が結婚したいとか言い出したらどうするつもりなんだろ。

危機感なさすぎでしょ、隙ありすぎでしょ、他の女の人にそれやったら危ないって！！

私は絶対そんなこと言わないけど…。

「んー、私はそんなの考えたこともないや」

よし。これで終わり！終了！

結弦くんと結婚を語るとか、そんなの怖すぎて絶対に無理。

だってきっと結弦くんの相手は…。

ほんの一瞬、涙で夜景が滲みそうになって焦る。

本当に、今日はこんなことばっかりだ。


「その結婚式って、男友達もいた？」

無表情で結弦くんが聞いてくる。

「うん。大学の同期はいたよ」

「ふーん。あれ着たところ、男友達には見せたんだ」

「へっ？何が？」

「さっきのドレス。クローゼットにかけてあった…」

「あぁ、あれ？」

結弦くんがこっちを睨むように黙っている。

ん？ひょっとしてこれって？

「もしかして結弦くん、私があれ着たところ見たいとか！？」

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