大丈夫じゃない ページ30
「要は皆に嫌われてたんだよね。私、結構そういうことあるの。今までもあったの。仲良くしてるつもりなのに、いつの間にか距離を置かれてるってことが。カフェのみかちゃんとか、先輩の美華さんとか、仲良くなれる人とはとことん仲良くなれるんだけど」
なんとなくわかる。
それはAさんが“優等生”だからだ。
一緒にいるうちに、相手に劣等感を抱かせるからだ。
「単なる妬みだろ。Aさん、何気に目立つし」
「ふふっ。それだけならこんなに落ち込まなかったけどね」
「それだけじゃねえの?嫌なことされたわけでもねえのに、あることないことバラまく奴らの心理なんて」
「……違うんだよ」
「なにが?」
「事細かく噂を流したのは、かおりんだったの。あの時、一番仲良くて信頼してた後輩」
絶句した――。
異動したばかりの頃、
話しかけてくれる後輩がいて嬉しいって喜んでたよな。
その後もクリスマスだ正月だってずっと一緒にいなかったか?
張り切って料理して家に呼んだりして可愛がってたはず。
その後輩が…?
「なんで?」
「彼女、学生の頃から、坂本くんを好きだったらしいの。坂本くんが私を好きなことを、前から知ってたんだって」
それで恨まれたってこと?
そんなの、Aさんには何の関係もないことだ。
「……知ってて、わざと近づいて来たってこと?」
俺の周りをうろつく、顔も知らない人間の影がチラつく。
俺を利用するためだけに近付こうとする人間――
「私がどんな人なのか気になって近付いたみたい」
「みたいって?」
「後になって坂本くんから聞いたの。噂を流したことを後悔して泣いてたって…」
反吐が出そうだった。
泣きたいのはお前じゃない。
「人のこと裏切っといて、馬鹿じゃねえの」
吐き捨てるように言うと、
Aさんは黙ってしまった。
身に覚えのない噂を立てられて後ろ指をさされる。
否定したって、疑惑が晴れることはない。
その噂を立てていたのは、信頼してた後輩。
それだけでも相当なダメージだっただろう。
仕事を続けるだけでも苦しいはずだ。
Aさんは作り笑顔で言った。
「それからは、何をどうやっても心に力が入らなくて。なんか不安定な感じ。なんとか美華さんや坂本くんに支えられて仕事してきたんだけどね」
俺は、一体何をしてたんだっけ?
一か月間、メッセージのひとつさえ送らずに。
Aさんなら大丈夫だって思ってた。
でも、彼女は全然大丈夫なんかじゃなかった。
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らっき(プロフ) - 神威さん» そうだったのですね。ファンの方だと思い込んでこちらこそすみません!そして嬉しいです。作品の心配をして下さって。今すぐには無理そうですが、完結まで書きたい気持ちが強いです。気持ちの整理がついたらいつか。とりあえず神威さんが辛くなくて良かったです!笑 (8月5日 23時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
神威(プロフ) - の作品の心配を...それくらい読み応えがあって、そういう世界があるんじゃないかと(そしてそれが応援できる)思い込んでいた...と言いますか。。。なので更新通知を見た瞬間「あ...もう書けません通知かもしれない...つら...」と身勝手ながら思っておりました。。。 (8月5日 21時) (レス) id: aa58e06295 (このIDを非表示/違反報告)
神威(プロフ) - お返事ありがとうございます。実は申し上げにくいのですが、私は羽生さんのファンではなくて、らっきさんの作品の羽生さんが好きでして...もちろん凄いスケーターの方である事は知っていたのですが...なので報道を知った時も、リアル羽生さんの事というより、らっきさん (8月5日 21時) (レス) id: aa58e06295 (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - 神威さん» 神威さんのお気持ちは大丈夫でしょうか?ショックを受けられてませんか?何かあったら吐き出して行ってくださいね。結婚すると推しが変わってしまう心配を普通はするのに、羽生さんは何も変わらない、そう思わせてもらえるのはすごく幸せなことだと思っています。 (8月5日 20時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - 神威さん» コメントありがとうございます。続きがありましたかね?最初に思い浮かべていただいたなんてなんだか嬉しいです。ダメージは受けてます。嬉しいし安心した気持ちはあるけどショックはあります。でも時間がかかっても書いてみたい気持ちが確かにあります。(続く) (8月5日 20時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らっき | 作成日時:2023年3月22日 13時