どんな話でも ページ27
「なんでそんなことしたの?」
やっとのことで訊いた俺に、
Aさんはきゅっと口を結んでから話し出す。
「逃げたかったの。今、自分のいる場所から」
「……」
「無理だと思うなら全力で逃げろって言ってくれたでしょ?
だから、言う通りに逃げてみました」
「逃げてみました、じゃねえよ。なんなのその全力の方向性」
「もう二度と、結弦くんに会えない自分になりたかった。そういうことしちゃえば、結弦くんに顔向けできなくなるし、新しいステージにいけるかもって。結局、ダメだったけど…」
「俺さ、話聞く気満々だったし、ある程度覚悟してきたけど、今めっちゃ折れそう、マジで」
テーブルに肘をついて溜息をつくと
Aさんが不安そうになる。
「もう聞きたくない、かな?呆れちゃった…?」
ポツリとそう言った後、すがるような目をする。
こんなこと、初めてかもしれない。
心細そうな顔をどうにかしてやりたくて、
思いっきりデコピンをくらわせてやった。
「痛っ!!」と驚いて額を押さえるAさん。
「そうじゃないって。話は聞きたいし、呆れてもないけど、それよりなによりショックだったってこと」
「ショック…?」
「Aさん、俺がAさんを好きだってこと、忘れてねえ?俺の知らないところでAさんが他の男を誘ってたって、普通にショックなんだけど」
「あっ……」
しまった!って顔してる。
こういうところがほんとにマヌケで鈍い。
思わず笑ってしまった。
「あっ、じゃねえって」
「…ご、ごめんなさい」
「Aさんはさ、俺の気持ちも言葉も小さく見積もりすぎ。聞くっていったらちゃんと聞くし、途中で投げたりしねえよ」
「どんな話、でも…?」
泣き出しそうな顔で見つめてくる。
俺がずっと、どうにかしてやりたかった顔だ――。
「聞くよ。ちゃんと聞く」
つい伸びてしまった手をどうにも出来ずに
とってつけたように頭をポンと撫でると
Aさんの目に涙が滲んだ。
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らっき(プロフ) - 神威さん» そうだったのですね。ファンの方だと思い込んでこちらこそすみません!そして嬉しいです。作品の心配をして下さって。今すぐには無理そうですが、完結まで書きたい気持ちが強いです。気持ちの整理がついたらいつか。とりあえず神威さんが辛くなくて良かったです!笑 (8月5日 23時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
神威(プロフ) - の作品の心配を...それくらい読み応えがあって、そういう世界があるんじゃないかと(そしてそれが応援できる)思い込んでいた...と言いますか。。。なので更新通知を見た瞬間「あ...もう書けません通知かもしれない...つら...」と身勝手ながら思っておりました。。。 (8月5日 21時) (レス) id: aa58e06295 (このIDを非表示/違反報告)
神威(プロフ) - お返事ありがとうございます。実は申し上げにくいのですが、私は羽生さんのファンではなくて、らっきさんの作品の羽生さんが好きでして...もちろん凄いスケーターの方である事は知っていたのですが...なので報道を知った時も、リアル羽生さんの事というより、らっきさん (8月5日 21時) (レス) id: aa58e06295 (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - 神威さん» 神威さんのお気持ちは大丈夫でしょうか?ショックを受けられてませんか?何かあったら吐き出して行ってくださいね。結婚すると推しが変わってしまう心配を普通はするのに、羽生さんは何も変わらない、そう思わせてもらえるのはすごく幸せなことだと思っています。 (8月5日 20時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - 神威さん» コメントありがとうございます。続きがありましたかね?最初に思い浮かべていただいたなんてなんだか嬉しいです。ダメージは受けてます。嬉しいし安心した気持ちはあるけどショックはあります。でも時間がかかっても書いてみたい気持ちが確かにあります。(続く) (8月5日 20時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らっき | 作成日時:2023年3月22日 13時