２人の距離【憧れの先】4

安堵 ページ13

美華さんの、震えていた細い肩を思い出す。

美華さんが本当は、どんな思いを抱えているかなんて全然知らないのに。
どうして大丈夫だなんて思ってしまったんだろう。

かつて私を慕ってくれた後輩の笑顔を思い出す。
彼女の気持ちになんて全然気づかずに、きっと無意識に傷つけていた。
私は彼女に裏切られたと思っていたけど、
本当は、どっちが裏切ってた…？

「ちょっとA、大丈夫！？」

みかちゃんが心配そうに顔を覗いていた。

「あ、うん平気！あぁ私、家に戻らないと…！美華さん、戻ってくるかもしれないから」

「え？じゃあ他にも美華さんを探してる人がいるの？」

「坂本くんが探してくれてる。とにかく、とにかく私は家に戻らないと！」

戻らなきゃ…。
もし美華さんが戻った時に誰もいなかったら。
今度こそ、本当にどっかに行っちゃう…！

出ていこうとする私を、ヒロくんが制止する。

「Aちゃんはもうちょっとだけ座ってな。あと５分したら俺が車で送ってく」

「でも…！」

私はもう誰にもいなくなって欲しくないの。

「ひどい顔してるぞ。Aちゃんの方が心配だ」

みかちゃんも、私を椅子に座るように促す。

「そうだよ。坂本くんって、あの頼もしい後輩君でしょ？きっと彼が見つけてくれるから」

坂本くんの後ろ姿を思い出すと、少し心が落ち着いた。

促されて椅子にへたり込んだ時、スマホが鳴った。
坂本くんからだ…！


『もしもし坂本くん？美華さんは！？』

『見つけました。少し離れた公園のベンチに座ってました』

『良かった…、ほんとに、良かった…』

冷たくなった手足に血が通うのを感じる。
私の声を聞いて、ヒロくんとみかちゃんもホッとした笑顔になった。

『今、とりあえず近くのファミレスに入ったとこです。この後、俺が家まで送っていこうと思うんですけど、Aさん、ここに来ますか？』

もちろん行く！と言いかけたけど。

ちょっと待って…。
２人にしてあげた方がいいんじゃない？
なぜかそんな気がする。

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