２人の片想い

特別な来客 ページ4

【主人公】

忙しい。とにかく忙しい。


朝から電話は鳴りまくるし、来店客はいっぱいだし、アポにない相続相談に差押まで来た。


そのうえ、これから謎の口座開設を１件、応接室扱いで受けなければならないことになっている。


前々から予定に入れられていたけど、ただの口座開設なんて他の人が対応してもいいのに。


あまりの忙しさに、上司にどうしても私が出ないとダメか聞いてみたら、特別な件だからどうしても私が受けねばならないと支店長から言われているという。



しかもなぜだか、事務処理含め最初から最後まで全て私が対応するように、ということだ。
対応はいいとしても、事務処理まで全部私がするなんて。
検印精査は、支店長まで持っていくように言われた。
どれだけ重要で秘密扱いのお客なんだろう。
他の行員になるべく見られないように、とまで言われている。

そんなに重要なお客の対応が私でいいんだろうか。
一応主任だから任されたのだろうけど。




「でもほんとにどうしよ・・この状況・・」


よりによって今日は1人、体調不良で休みが出ているという最悪な状況。
これはお昼休憩なしの残業コースだな。


よし。仕方ない。
終わったらスーパーでアイスを買って自分を労おう、そうしよう、と思っていると、さっそくその特別らしいお客が来たと後輩の坂本くんが知らせてくれた。


その坂本くんも、だいぶ切羽詰まった状況のようで何やら難しい案件に当たってしまったようだ。


坂本くんに目で『無事を祈る』と合図を送る。


心細そうな坂本くんの様子はまるで子犬で力を貸してあげたくなるけれど、こちらはその支店長扱いの特別なお客とやらが来てしまったので無理だ。


大丈夫、課長も次長もいる。


石のように動きの悪い彼らでも、いざとなったら坂本くんを助けてくれるだろう。


そう思って、私は特別なお客の待つ応接室へと入っていった。

いざ銀行へ→←突然の提案3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す