68. ページ21
・
「もしもし 知らない男ですが」
「貴方誰?Aさん?代わりなさい 馬鹿なのねあの子」
「てかそっちこそ誰ですか?帰る場所こっちなんで」
「親戚ですが何か」
「血縁があろうとAのこと怒鳴るような奴のところに置きたくないんで じゃ」
怒鳴ってる声も知らんぷりして
ぷつって切ると
「まだこの機種使ってんの」
って震える私の片手に戻した
『大我さん ねえ』
「待たせてごめんね 怖かったでしょ Aは怒られるの1番嫌いって知ってる」
まだ震えてる右手をぎゅって包んでくれて
あったかい
「傘わすれちゃったの?濡れちゃうよ」
そっと傘に入れてくれて
たいがさんは
いつもこうだ
ひょろって現れて助けてくれる
「それとも大の大人が家出?」
ふって笑って
私のぱんぱんの荷物をひょいっと背負った
『わかっちゃいましたか 』
「Aの顔見れば全部わかるよ」
並んで歩きはじめる
久しぶりに見る大我さんは雨でよく見えないけど変わらず優しい顔をしていた
『大我さん私あっちなんですけど、駅』
「何言ってんの?俺ん家に帰るんでしょ」
悪戯っぽく笑うんだ
『怒られるかも 叔母さんに』
「いいよ俺が責任取るから」
初めて出会った日に歩いたこの道は
危険な香りと一時の欲と一時の憂鬱に満ちていたのに
今ではまるで 幸せそのものみたいな懐かしさに溢れてるのが不思議だ
「あっそう ライブ来てたの?」
『いや ほんとたまたまで びっくりしてしゃがんでました』
「そっか」
『でも嬉しかった うん 死にそうなぐらい』
「死んじゃダメってずっと言ってんのに」
『忘れられちゃったかと思ってて うんだからすっごい嬉しくて』
「そんな簡単に忘れられないでしょ」
傘から飛び出さないように肩をぎゅってしてくれてる手がくすぐったい
「俺は待ってたけどね」
『え?』
「うん 来ると思ってた 来てるだろうなって思って歌った」
大我さんは「合鍵捨ててないよね?」なんて口をとがらせながら玄関を開ける
家に入ると雨でびしょ濡れの頭をタオルでわしゃわしゃって拭かれて
大我さんは「やっぱり犬っぽい」って笑った
そのやり取りだけであの時に戻った気分になる
867人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はむ | 作成日時:2022年8月14日 2時