満月の夜に乾いたギターを２【完結】 (ページ14)

今日:1 hit、昨日:27 hit、合計:72,324 hit

61. ページ14

・

バスの隣に座って
私の荷物を抱える大我さんは何も口を開かなくて、私も一緒に黙って外を眺める

あのライブハウスよく行ってました
あそこバイトの常連さんのバーなんです
わたし前にあの道でコケましたよね

沢山言いたいことがあるけど
幼い私には空気を壊すことができなかった
でもきっと大我さんにも伝わっていたと思う

大我さんも黙って時折窓を眺めては
手をぎゅってして離してを繰り返していた

微妙に触れる肩だけが異様に熱くて
この時
もしかしたらもう大我さんには会えないのかもしれないって悟った

駅前につくと外はやっぱり秋雨で
出会った日も雨だったなって懐かしくなる

『大我さんありがとう荷物もらっていい？』

駅のホームに向かうと腕をぐっと引っ張っられて大我さんの体にすっぽり埋まった

『どうしたの？大我さん濡れちゃうよ』

「いいのあとちょっとだけ」

そういうとまたぎゅっとする力が強くなった

大我さんはいまどんなこと考えてるのかな

ぎゅっとした腕から伝わる体温だけが頼りだ

『大我さんもういくね』

「着いたら電話して不安になるから」

私についた雨を拭うと
そう一言残して大我さんは離れた

すっからかんな気持ちのまま乗る電車はあまりにもあっという間で

外に出るともう夜
両手にたくさんの荷物を抱えて
ただ悲しい三日月を見上げた

そうだ最後の約束は守ろう

見慣れた番号を押す

『着きました』

「よかった」

『大我さんも月見てますか？』

「うん見てるよ」

『大我さん会いたいです』

会話が途切れる
いつかの日の"大人は素直になれないから寂しいね"なんて笑った大我さんが頭によぎった

「またいつかね」

ずるい大人

だけど大我さんのそんなところも好きで
この先他の人どどんな恋をしようと
私はこの気持を一生忘れないだろう
大我さんもそうでいてくれますように
またいつかなんて信じることに慣れてないんだ