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麗美さん、っていうんだ。
綺麗な人にピッタリの名前。
「麗美になんか言われたんなら、気にしないで?」
「え…っ?」
「麗美、秘書としては優秀なんだけど
なんか勘違いしてるみたいで」
「勘違い?」
「うん。麗美とは一回寝ただけだし」
「えっ」
あまりにも平然とそう言うから、
こちらがビックリしちゃう。
「寝た時 元カノの事引きずっててさ。
慰められて一回くらいならいっかって思って」
「そう、でしたか」
「ほんとは、好きな人とだけって決めてたんだけどねー。
それで、Aさんはどうして?」
ドキッと胸が飛ぶ。
わたしも、言うべきだよね?
「私は…」
「…あーっ、やっぱ、言わなくていいよ。
言いたくないんでしょ?」
頷くと、また背中に回された腕。
「泣いていいよ、Aさん」
その言葉を箍に静かに溢れ出す涙。
諦めなきゃいけないよね。
…諦めよう。
もう、チャンスなどないのだから。
そう思うと誰かにこの気持ちを
聞いてもらって楽になりたくなってきた。
「あの、やっぱり聞いて欲しいです…」
「俺がよく知ってる店があるんだけど、そこでいい?」
今夜は、2回しか会ったことない今市さんに慰めてもらおう。
そう思い、彼の後に続いた。
抱きしめられた時の
甘い香りが、まだ微かに残っていた。
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作者名:あき x他1人 | 作成日時:2019年12月28日 23時