310 ページ12
音のないリビングが淋しくて。
DVDを選ぶ。
どれにしようか...。
ふと目に止まったのはあの時の...。
「っ...!」
びくんと身体が跳ねるように...。
目を反らして。
震える手を握りしめて。
...なお。
「...大丈夫。...大丈夫。」
言い聞かせて。
ーピコン。
静かすぎる部屋の中。
響く通知音に縋るように。
「...秀太兄。」
秀太兄配達終了ー!今から帰るけん!
由花ありがとう。
秀太兄なんかいるもんあるや?
由花大丈夫。
秀太兄了解!じゃあ待っとってー!
由花はい。気をつけてね。
「...っ。」
秀太兄のお陰でどうにか手の震えは止まったけれど。
恐怖感は澱のように。
なおの匂いの残るブランケットを抱きしめながら。
「...なお。」
手の中のスマホ。
なおとのツーショット。
「なおの声...聞きたい。」
いつの間にか頰を伝う涙。
霞む画面越し。
気づけばそう、メッセージを送っていた。
ーピコン。
なお由花?どうした?
なおからのメッセージ。
仕事中なのに...。
なんでもないと送ろうと思うけれど...。
由花ごめんなさい。怖くて。
指先はそう、動いて。
すぐに歌声が響く。
「...なお...。ごめ...。」
「どうしたの?...何かあった?」
「...ライブ観ようと思ったの...。選んでる時に...こないだの...見つけて...怖くな...っく。」
「あぁ...。ごめん、由花の目につかないとこに置こうと思ってたのに忘れてて...。秀太達はまだ?」
「...っく。...うん、まだ...。」
「そっか。...もう少しだけ待ってて?終わったらすぐ帰る。もう少しだから。...一緒にいてやれなくてごめん。」
「...ふ...ごめ...なさ...っ。お仕事...っく。...でも怖くて...っ。」
「ごめんね、片付けとけば良かった。けど大丈夫だから。ちゃんと俺に言えたでしょ?だから大丈夫。ね?」
「うん...っ。なおっ...早く帰って来て...っ。」
「うん。待ってて?もう少しだけ。ね?」
「ん...っ。待ってる...っく。」
「ん。もう泣かないの。ね?じゃあ仕事に戻るね。日高待たせてるから。...ごめんね、由花。また後で連絡するから。」
「っ...はい。光兄にごめんなさいって。」
「ん。わかった。じゃあ後でね。」
36人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅緋(プロフ) - ドリーさん» フラグは作成時に外したんですが...。ちょっと調べてみます。ご連絡ありがとうございました。 (2017年10月4日 11時) (レス) id: 87ebfce426 (このIDを非表示/違反報告)
ドリー(プロフ) - オリジナルフラグを外して下さい!運営によって削除される可能性があるよ! (2017年9月29日 20時) (レス) id: 5e3261a1cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅緋 | 作成日時:2017年9月28日 2時