デンドロビウム(sig) ページ26
※このお話はLGBTQをテーマにお話を構成しております。彼がそうだ、とは言い切れませんし、ここのお話はフィクションである、ということを念頭にお読みください。
好きなことだけを出来る人生を送れる人間なんて、世界中探してもほんの一握りしか居ないだろう。
私が私であることを否定されることもある。ピアスやマニキュアやリップを良く思わない人だって居る。最近は生きやすい世の中に変わりつつあるとしても、マイノリティな自分を全員が受け入れてはくれない。わかっていても落ち込むことだってある。
そんな時にそいつはいつも笑って側に居てくれた。
「今日はスーツなんだね」
「そっちこそ、きらびやかなドレス着ちゃって」
大学の共通する友人の披露宴に呼ばれて、窮屈な服に身を包んで笑顔を貼り付けて“久しぶりだね”なんて当たり障りない会話をする。
「まだそのピアスしてたんだ」
「相変わらず仲良いね」
「志賀たちは結婚しないの?」
私とAのお揃いのピアスは“パートナー”という印ではない。女避け、男避けの意味が込められていて、大学時代に誕生日プレゼントで貰ったもの。お互いがお互いを利用した関係性は今も続いている。利害の一致、というやつだ。
「結婚が全てじゃないから」
「えー?Aは子ども欲しいとか思わないの?」
「今が楽しければそれでいいよ」
友人に笑顔で応えるAを見ていると、自分まで胸が苦しくなる。その笑顔の意味を知っているのは私だけなのだろう。
「あー、疲れた」
「ちょっとここで脱がないでよ」
私のアパートに一緒に帰って来たAは真っ先にドレスを脱ぐ。倫理観的な問題でTシャツを投げつける。A相手に邪な感情はない。私も窮屈な服からラフな、自分が着たい服を着る。
「やっぱり出るんじゃなかった」
「ごめんね?」
「別に、志賀のせいじゃないし」
ゴシゴシ、とメイクを落とすAの横でリップを塗る。
どこか元気のない様子は多分今日友人たちに言われたあれこれが原因。親戚からも聞かれ飽きている質問を同世代の友人からされるのはなかなかキツい。でも、一番キツかったのはきっと、、
「子どもを産めるのは女の幸せ、だって。そんなの、みんながみんなそうじゃないでしょ」
「A、」
「なんで“みんな同じ”だと思うんだろうね?」
いつも何を言われようと泣かないAの涙を見たのは初めてだ。
見た目とか性別とか、そんなものはどうでもいい。
「私は“あなた”が好きだよ」
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柊 - 亜杞さん» 分かります…!唐突に頭の中にメロディー流れてくるんですよね…私もまさかここで目にするとは思ってもいませんでした…あれをつかってこんな素晴らしい作品が書ける亜杞さんこそあんたすげーよ!(です!!) (2022年6月21日 18時) (レス) id: c57341bca6 (このIDを非表示/違反報告)
亜杞(プロフ) - 柊さん» 正解TMYです!私未だに口ずさみたくなっちゃうんですよね。まさかご存知の方がいらっしゃるとは……柊さん、あんたすげーよ!(これが言いたいが為にレス書き直しました) (2022年6月19日 23時) (レス) id: 892b969d86 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - 焼きそばの校歌ってTMYですか…?間違ってたらすみません…気づいて少し懐かしくなりました (2022年6月19日 18時) (レス) @page34 id: c57341bca6 (このIDを非表示/違反報告)
亜杞(プロフ) - akiakiさん» 身に余るお言葉ばかり恐縮です。ありがとうございます!策士なfkrさん書きたがりなので楽しんで頂けると嬉しいです。過去作も新作の方もよろしくお願いいたします。 (2022年4月17日 14時) (レス) id: 892b969d86 (このIDを非表示/違反報告)
akiaki(プロフ) - 読んでる途中ですがもうこのお話たちが好きすぎて、、、色合わせのfkrさん、自分のものじゃん!策士〜!その方らしさを出しながら、素敵なお話を書かれていて尊敬します。これからも楽しませていただきます! (2022年4月17日 10時) (レス) @page46 id: aa9a6e18cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜杞 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月14日 20時