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「片桐さんね、背がすごく高くて、噂通り本当に強くて、ちょっといい匂いしたし、それでいてクールなの。かっこよかったなぁ……」
「A、昨日サテンから帰るときからずっとそれ言ってるわよ」
翌日の朝、通学路の商店街を歩きながら、理子が微笑ましそうに私を見た。
「いや〜だって、片桐さんって噂でしか聞いたことなかったから、どんな怖いゴリラかと思ったら予想外にかっこよくて」
「Aがこんなにツッパリの話するの珍しいわね、ちょっと見てみたいかも」
片桐さんの話をする私を見てほわんとした空気を放っていた理子が突然、何かを思い出したようで焦り出した。
「今日、日直だ……!!Aごめんね、私先に行く!」
理子は私の返事も待たずに走って行った。
「行っちゃった」
私は足元に落ちていた空き缶を軽く蹴って、小さくなった理子の背中を見つめながら歩いた。
「Aさん!!!!」
遠くから私を呼ぶ声がして、振り向いた。
駆けてくる、青い制服の2人組。
「今井さん、谷川さん」
少し息を切らして、私の前で立ち止まる。
「Aさん、おはようございます」
「お二人とも、おはようございます」
今井さんは爽やかな笑顔で私を見ている。
「あれから、何かお変わりありませんか?」
「はい、お陰様で何も。あっ、お二人にお渡ししたい物が」
私は鞄を開けて、袋を2つ取り出した。
昨日の夜、サテンから帰った後に作ったクッキーだ。
「昨日、助けていただいたお礼です。ありがとうございました」
谷川さんは嬉しそうにクッキーを見た。
「俺もいただいちゃっていいんですか?」
「はい、良ければ是非」
「あざっス!」
谷川さんは喜んで受け取ってくれた。
でも、今井さんはクッキーを見たまま固まっている。
そんな今井さんの肩を、谷川さんがトントンしながら呼びかける。
「今井さん?どうしました?今井さん?」
その声で、今井さんはやっと我に返った。
「嬉しさのあまり、つい、ありがとうございます」
呼吸を荒くしながら今井さんはクッキーを受け取ってくれた。
「それじゃ、もうそろそろ行かないと遅刻するので。失礼します」
私はそう言って、駆け足で学校に向かった。
その後ろで、「やったーーーーーーー!!!!!」という叫び声が聞こえて、思わず笑ってしまった。
あんなにピュアなツッパリ居るんだ。
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こいずみ(プロフ) - 青龍 葵さん» コメントありがとうございます!返事が大変遅くなりましてすみません、、!!久しぶりに更新しました。またお楽しみいただけると幸いです!! (2021年10月21日 23時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。 (2021年5月3日 5時) (レス) id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - hiroさん» ありがとうございます!! (2020年8月18日 11時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
hiro - とても面白かったです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月14日 1時) (レス) id: ed14337de3 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - 豫さん» 果たしてお家デート(?)なのでしょうか!!笑 きゅんきゅんしていただけて嬉しいです〜!! (2020年8月8日 1時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こいずみ | 作成日時:2020年7月31日 16時