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私の家に着いて、ソファーに智司さんを座らせ、私は棚から救急箱を取り出す。
智司さんの左隣に座り、口元に滲む血をティッシュで拭き取る。それから、ティッシュに消毒液を染み込ませた。

「ちょっとこっち向いて」

智司さんと近距離で目が合い、心臓が跳ねる。

「……し、染みるけど我慢してね」

傷口にトントンと優しくティッシュを乗せると、智司さんは少しだけ顔を歪ませた。
……痛い思いまでして、どうして頭張りたがるんだろう。男のプライドってやつなのかな。
……それと、三橋くんと喧嘩始める前。

「どうしてあの時、私を智司さんの方に来させたの?」

智司さんの傷にガーゼを貼りながらそう聞くと、伏せていた智司さんの瞳が私を捉えた。
真っ直ぐと私を見つめる智司さん。鼓動がどんどん速くなって、私の顔にも熱がのぼる。
ただ私を見つめるだけの智司さんに耐えられなくなった私は目を逸らした。

「……な、何もならいい。保冷剤持ってくる」

私は立ち上がって、冷凍庫から保冷剤を出す。

「お前」

智司さんがぼんやりと前を見つめながら静かに口を開く。

「……伊藤に近づきすぎなんだよ」
「…………へ?」

何を言うかと思えば予想外の言葉に、私は間抜けな声を出してしまった。
あの時、伊藤くんの血を拭いていたし、智司さんに呼ばれた時は伊藤くんに腕を掴まれた。
……もしかして、ヤキモチ?
智司さんの耳は赤くなっていて、それを見た私はふわふわとした不思議な感覚に包まれる。

…………愛おしい。

この感覚は、そういう感情だ。
ぼーっとしていた私の目の前には、いつの間にか智司さんが立っていた。

「怪我してるからって容易く野郎に近づくんじゃねぇ」

いつもの私なら、おちゃらけた返事をしたかもしれないけど、今の私にそんな余裕は無くて、ただ智司さんを見つめることしかできなかった。

「……ありがとよ」

智司さんは優しい表情を浮かべて、私の手から保冷剤を取る。
速く脈打つ鼓動は落ち着かなくて、ソファーに戻って頬を冷やす智司さんを、私はぼーっと見つめていた。

……私、智司さんのこと好きだ。
理子や京子ちゃんに散々冷やかされていたけど、今の私はすんなりとそれを受け入れた。
今まで智司さんのことばかり考えて考えていたのも、智司さんの行動にドキドキしていたのも、全部全部、私が智司さんのことを好きだからだ。

……これが恋というものなんだ。

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設定タグ:今日から俺は , 片桐智司   
作品ジャンル:ラブコメ
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こいずみ(プロフ) - 青龍 葵さん» コメントありがとうございます!返事が大変遅くなりましてすみません、、!!久しぶりに更新しました。またお楽しみいただけると幸いです!! (2021年10月21日 23時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。 (2021年5月3日 5時) (レス) id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - hiroさん» ありがとうございます!! (2020年8月18日 11時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
hiro - とても面白かったです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月14日 1時) (レス) id: ed14337de3 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - 豫さん» 果たしてお家デート(?)なのでしょうか!!笑 きゅんきゅんしていただけて嬉しいです〜!! (2020年8月8日 1時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こいずみ | 作成日時:2020年7月31日 16時

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