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商店街を歩く三橋くんを、私と理子は尾行している。
三橋くんが振り返りそうになると、私たちは電柱の影や、服が掛かったラックの影に隠れる。
けど、さっき私は三橋くんと目が合ってしまったし、私だけじゃなく理子の姿もバッチリ見られている。
「理子。これバレてるよ」
「大丈夫よ」
三橋くんが振り返って、私たちがまた電柱の影に隠れたとき。
「三橋さん……!」
軟高の制服を着た男子が狭い道から出てきて、三橋くんに話しかけた。あれは……別のクラスの木村くんだ。よく見ると怪我をしていて、私は嫌な予感がした。
「伊藤……伊藤さんが……開久の奴らに……」
開久。その名前が出てきた瞬間、私の心臓が嫌に跳ね上がった。
智司さんもいるのだろうか。……でも、昨日智司さんと夜ご飯を食べたとき、伊藤くんの名前は出てこなかった。伊藤くんと揉める理由も無いなら喧嘩もしないだろう。……ということは、相良か。
三橋くんは、木村くんが出てきた道へ入って行く。
私は、理子と目を合わせた。
「どうしよう……」
どちらの味方にもならないとは言ったものの、伊藤くんがやられているらしい今、三橋くんが開久の集団に突っ込んで行ったらきっと危ない。
理子は鞄を見つめる。
「……私、とりあえず鞄家に置いてくる。三ちゃんに何かあったら私も戦えるように」
「そうだね」
私が頷くと、理子は私に背を向けて走って行った。
私も理子と逆の方向に走って、家に鞄を置きに行った。玄関に鞄を放り投げて、さっき三橋くんが入って行った狭い道を走る。
開けた場所に出ると、開久の生徒たちが血だらけで倒れていた。三橋くんと伊藤くんはもう居ない。
私はしゃがんで、その中の1人に声をかけた。
「あの〜すみません、金髪とツンツン頭知りませんか」
声をかけたツッパリはうっすらと目を開け、息絶え絶えに答える。
「……金髪は……相良さんを追いかけてったよ……ツンツン頭は……知らねェ……」
「そうですか。ありがとうございます」
私は別の道に入り、考えながら歩く。
……そういえば、近くに廃倉庫があった気がする。
私はその場所へ向かって一目散に走った。
「ここだ……」
倉庫に入ると、部屋から三橋くんと誰かが言い争う声が聞こえてきた。
急いで部屋に入ると、三橋くんが呆然としながら、向こうの扉から入って来た智司さん率いる開久を見つめていた。
私が居る扉のすぐ横には、頭から血を流した伊藤くんと今井さんが壁にもたれて座っていた。
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こいずみ(プロフ) - 青龍 葵さん» コメントありがとうございます!返事が大変遅くなりましてすみません、、!!久しぶりに更新しました。またお楽しみいただけると幸いです!! (2021年10月21日 23時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。 (2021年5月3日 5時) (レス) id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - hiroさん» ありがとうございます!! (2020年8月18日 11時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
hiro - とても面白かったです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月14日 1時) (レス) id: ed14337de3 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - 豫さん» 果たしてお家デート(?)なのでしょうか!!笑 きゅんきゅんしていただけて嬉しいです〜!! (2020年8月8日 1時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こいずみ | 作成日時:2020年7月31日 16時