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智司さんを探しながら、商店街の周りを歩く。とばっちりを食らって散々だった。
智司さんに一目会えて、状況が落ち着いたら、ものすごい眠気が……。
いや、私は智司さんにちゃんと会うんだ。
それで、さっき私の名前まで呼んで何を言おうとしたのかもう一回聞きたい。
頬を叩いて、眠い目を起こす。
しばらく歩いていると、開久の集団が前から歩いてくるのが見えた。
私に気づいた智司さんは、集団から抜けて私の方へ歩いて来た。
「……他の人たちと別行動しちゃっていいの?」
「ああ、気にすんな」
「そっか」
目が半開きになって来ている私が智司さんに笑顔を向けると、智司さんは少し屈んで顔を近づけて来た。
「な、なに?」
「……お前、ちゃんと寝てんのか」
「あぁ……うん、いや、最近眠れなくて。今やっと眠くなってきたところ」
智司さんのせいなんだけどね。
智司さんがいろんな顔して、頭撫でたりするから。
……なんて、そんなこと言えないけど。
「じゃあ今日はもう帰れ」
「でも私、智司さんに会いに来て……あっ」
何を言ってるんだ私。私は口を塞いだ。眠すぎて思考回路がだいぶ緩くなっている。こんなの、引かれてしまう。
恐る恐る智司さんの顔を見上げると、智司さんはフッと笑って、私の手を引いて歩き出した。
私の一歩前を歩く智司さん。手のひらから伝わる、智司さんの手の温度にドキドキしてしまうのと同時に、心地良いとも思う。
「可愛い奴」
「えっ?」
とても小さな智司さんの声に、私は耳を疑った。
「何も言ってねぇよ。寝ぼけてんのか」
智司さんはそう言いながらも、柄にもなく耳を赤くしていた。……いや、それとも私があまりにも眠すぎて本当に寝ぼけているのか。
智司さんに手を引かれて着いたのは私の住むアパートの前。送ってくれたんだ。
判断力が鈍っている私は、智司さんの手を離さずに階段を上り、部屋のドアを開けた。
「俺は帰るぞ」
「ダメです智司さん。さっき三橋くんに殴られたんだから冷やしてから帰って」
……本当は、眠いから人肌が恋しくて、もう少し一緒に居たいだけ。
「あんなのなんともねぇよ」
「ダメ、あとで腫れるかもしれないから。っていうかちょっと赤くなってるし」
智司さんをジッと見ると、智司さんはため息をついて渋々部屋に入った。
私はすぐ冷凍庫から保冷剤を出して、ハンカチで包んでから、ソファに座る智司さんに渡した。
その後、私は限界がきてしまい、すぐ眠りについたのだった。
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こいずみ(プロフ) - 青龍 葵さん» コメントありがとうございます!返事が大変遅くなりましてすみません、、!!久しぶりに更新しました。またお楽しみいただけると幸いです!! (2021年10月21日 23時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。 (2021年5月3日 5時) (レス) id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - hiroさん» ありがとうございます!! (2020年8月18日 11時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
hiro - とても面白かったです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月14日 1時) (レス) id: ed14337de3 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - 豫さん» 果たしてお家デート(?)なのでしょうか!!笑 きゅんきゅんしていただけて嬉しいです〜!! (2020年8月8日 1時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こいずみ | 作成日時:2020年7月31日 16時