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三橋くんは今井くんに向き直る。
「お前、泳げるか」
「河童の今井と呼ばれてる」
今井さんは得意げにそう答えた。
「誰が呼んでんの」
「嘘。呼ばれたことはない。ただ泳げる!」
この状況でよくそんなしょーもない嘘つけるな……。
「よし……なんとかお巡りさんから逃げなきゃなんねぇ。」
三橋くんはそう言うと、今井さんのポケットというポケットに小石を詰め込んだ。
「えっ、三橋くん何やってるの」
そんなことしたら今井さん沈んじゃうんじゃない?
私が聞いても何も答えず、ただ小石を詰め込む。今井さんは何故か笑顔だし。
「今井さん、あなた今何されてるかわかってます?」
今井さんに聞いても、ただ笑顔を向けられてるだけだ。
「Aちゃんはここに居ろ」
私にそう言ってウインクした三橋くんは、今井さんと堤防の上に登った。
「何?何する気?」
「よし!行くぞ!」
「ああ!」
三橋くんの掛け声に元気よく返事をする今井さん。嫌な予感がする。
「ドーーーーーーン!」
その声と共に三橋くんに背中を押されて川に落ちる今井さん。嫌な予感は当たった。
「ちょっと三橋くん!何してるの!?今井さん!!」
私は堤防に身を乗り出し、今井さんをどう助けようか考えているうちに「もう逃さんぞ!」とサツに追い付かれてしまった。
その瞬間、三橋くんが渾身の演技を始めた。
「大変ですお巡りさんー!友達が川にー!!泳げないんですぅう!!早く、早く助けてやってくださいィイ」
「えぇ……」
私は怪訝な顔で三橋くんを見上げた。
「今助ける!」
サツはそう言って川にダイブした。すると、三橋くんは「お願いしまーす」と頭を下げ、堤防から降りると、私の腕を引いてスキップした。
「今井さん助けないの!?ねぇ、いいの!?」
私がそう言うと、三橋くんは私の腕を離す。
「いいんだよ、あんなバカ。どっちかというと俺は巻き込まれた側だしな」
気怠げに三橋くんはそう答えた。
「そう……」
「っていうかさ、Aちゃんさ、開久のボスゴリラと知り合いなの?」
「ボスゴリラ?智司さんのこと?」
そう聞くと、三橋くんは頷く。
「ま、まあ。助けてもらったことがあって」
「えー、アイツ人助けたりすんの?」
「怖そうだけど良い人なんだよ、仁義わかるし。それじゃ、私もう帰るね」
三橋くんに背を向けて、私は商店街の近くへ向かった。智司さん居るかな。
そういえば、サツに追いかけられる前、初めて智司さんに名前呼ばれた。
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こいずみ(プロフ) - 青龍 葵さん» コメントありがとうございます!返事が大変遅くなりましてすみません、、!!久しぶりに更新しました。またお楽しみいただけると幸いです!! (2021年10月21日 23時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。 (2021年5月3日 5時) (レス) id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - hiroさん» ありがとうございます!! (2020年8月18日 11時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
hiro - とても面白かったです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月14日 1時) (レス) id: ed14337de3 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - 豫さん» 果たしてお家デート(?)なのでしょうか!!笑 きゅんきゅんしていただけて嬉しいです〜!! (2020年8月8日 1時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こいずみ | 作成日時:2020年7月31日 16時