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私が住んでいるのは、高校生の一人暮らしにしては贅沢な、1LDKのアパート。もちろん費用は親持ち。
これから片桐さんが来るのが現実とは思えないけど、私はとてもドキドキしている。
制服を着たまま、ロールキャベツを煮込みながら、私は片桐さんと初めて会った時のことを思い出していた。
「"ツッパリとは関わりたくないんで"なーんて言っちゃってるくせに何をやってるんだ私は」
そう呟いて私は自嘲気味に笑った。
ヤクザにバレないようにするためにツッパリとも関わらないようにしてたのに、ヤクザと繋がってる開久の頭とこれから一緒に夜ご飯って。本当、矛盾してる。
もう少しでロールキャベツが出来上がる頃、"ピンポーン"と部屋にチャイムが鳴り響いた。
「ハい!」
緊張のあまり、声が裏返ってしまった。
リラックス、リラックスだ、A。
玄関のドアを開けると、片桐さんが立っていた。
片桐さんはサイダーが入った袋を無言で私の前に掲げる。
「……本当に来た」
「何言ってんだ。行くって言ったろ」
いや、本当に来るのはわかっていたけど、本当に片桐さんが来て、やっと現実なんだと認識した。
「ど、どうぞ」
私は隅に避けて、片桐さんを中に入れた。
「……お邪魔します」
片桐さんがそう言った瞬間、私は思わず吹き出してしまった。
「何笑ってんだ」
「いや……普通に礼儀正しいのがちょっと面白くて」
「俺だって礼儀くらい弁えてる」
「すいません。あっ、もうご飯できるので、適当にくつろいでてください」
私はそう言ってロールキャベツを煮込む火を止める。
すると、片桐さんはサイダーをローテーブルに置いて、私の隣に来た。
「手伝う」
「……え?」
一瞬空耳かと思ったけど、片桐さんを見るとしっかり私を見つめていて。
「さっきからお前どうした」
「いや、じゃあ、ご飯炊けてるのでよそってもらっていいですか」
「おう」
「お願いします」
私は片桐さんにしゃもじとお茶碗を渡して、ロールキャベツを盛り付ける。
片桐さんが手伝ってくれるなんて。キッチンに立ってるなんて。何この状況。落ち着かなくてソワソワしてしまう。
ロールキャベツとサラダと味噌汁をテーブルに運ぶと、片桐さんはコップにサイダーを注いでくれていた。
「わざわざありがとうございます」
嬉しくて、私はふふっと笑った。
「このくらいやって当然だろ」
片桐さんはいつもと変わらない表情をしていたけど、その目は少し嬉しそうだった。
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こいずみ(プロフ) - 青龍 葵さん» コメントありがとうございます!返事が大変遅くなりましてすみません、、!!久しぶりに更新しました。またお楽しみいただけると幸いです!! (2021年10月21日 23時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。 (2021年5月3日 5時) (レス) id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - hiroさん» ありがとうございます!! (2020年8月18日 11時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
hiro - とても面白かったです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月14日 1時) (レス) id: ed14337de3 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - 豫さん» 果たしてお家デート(?)なのでしょうか!!笑 きゅんきゅんしていただけて嬉しいです〜!! (2020年8月8日 1時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こいずみ | 作成日時:2020年7月31日 16時