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開久がウロついてるなら、片桐さんに会えるはず。今日の朝も、もしかしたらあの近くにいたかもしれない。
理子に言われたお弁当大作戦を決行してみようと思って、私は片桐さんに食べれないものがあるか聞いておきたかった。
学校から出た私は、商店街やその周辺を歩き回った。
「片桐さ〜ん、どこですか〜」
誰にも聞こえないくらいの声でそう呟きながら、辺りを見回すと、開久の制服を着た集団の後ろ姿が見えた。後ろからでもわかる、背の高い影。
「ビンゴ!」
そのまま走って片桐さんに声をかけようかと思ったけど、片桐さん以外の関わったこともなく素性もわからないツッパリ達に目を付けられるのは流石に危ない。
私は別の道から先回りして、偶然を装って前から開久の集団に1歩ずつ近づいた。
片桐さんも私に気づいたらしく、目が合って私は駆け寄った。
「こんにちは。お久しぶりです」
「ああ、久しぶりだな」
片桐さんが立ち止まると、一緒にいる開久も止まった。それにしても、集団で居ると物凄い圧だ。
「なんだ智司、マブいねぇちゃんじゃねぇか。いつの間に女作ったんだよ」
そう言ったのは隣の銀髪リーゼントで、いかにもツッパリって感じの見た目をした男だった。
"女"なんて言われて、私は少し動揺してしまった。
「馬鹿。そんなんじゃねぇよ」
智司さんが否定する。
「この間、片桐さんに助けて頂いただけで」
「ほーん」
銀髪さんはニヤニヤと私を見ていた。もしかしてこの人、狂犬って呼ばれてる相良猛か。
「あの、片桐さん。お聞きしたいことがあって」
私がそう言うと、智司さんは開久に「先に行ってろ」と言った。相良と思われる人は、片桐さんの肩をぽんっと叩いて、仲間を連れてゾロゾロと去って行った。
「何の用だ」
「あの、この間のお礼の件で。片桐さんって食べれないものありますか?」
「特に無い」
「そうですか、わかりました。それじゃ!」
片桐さんに笑顔を向けて去ろうとすると、片桐さんに「おい」と呼び止められる。
「名前……教えてくれ」
……そういえば、片桐さんに私の名前教えてなかったな。
「Aです、桜宮A……はっ」
名字まで言ってしまい、私は口を塞いだ。
どうしよう、桜宮家の娘だってバレたらどうしよう。
「お前……」
片桐さんが顔をしかめて近付いてくる。
え、バレた?変な汗が出そうだ。
あまりにも近くて、思わず目を瞑ると、ほっぺにツン、と何かが当たる感触がした。
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こいずみ(プロフ) - 青龍 葵さん» コメントありがとうございます!返事が大変遅くなりましてすみません、、!!久しぶりに更新しました。またお楽しみいただけると幸いです!! (2021年10月21日 23時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。 (2021年5月3日 5時) (レス) id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - hiroさん» ありがとうございます!! (2020年8月18日 11時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
hiro - とても面白かったです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月14日 1時) (レス) id: ed14337de3 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - 豫さん» 果たしてお家デート(?)なのでしょうか!!笑 きゅんきゅんしていただけて嬉しいです〜!! (2020年8月8日 1時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こいずみ | 作成日時:2020年7月31日 16時