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夕焼けで街がオレンジ色に染まる頃、お弁当用の食材を買って帰ろうと、商店街を歩く。
「明日のお弁当何作ろうかなぁ」
考えながら歩いていると、道端に財布が落ちているのを見つけた。
持ち主らしき人が居ないか周りを見渡し、財布を拾った。
交番に届けよう。
そう思って歩き出そうとしたとき。
「おい」
低い声と一緒に、後ろから肩を掴まれ、乱暴に振り向かされる。
嫌な予感しかしないよ。
「それ、俺の財布なんだけど」
そう言ってきたのは開久の制服を着た不良だった。
「そうですか。落ちてたので交番に届けようかと」
財布の汚れを払って返す。
「ああ?テメェ盗もうとしただろうがよォ」
「はあ?何を根拠にそんなこと」
面倒くさいのに引っかかってしまった。
不良は私の胸ぐらを掴む。
「テメェ、女のくせにそんな口の利き方してんじゃねぇよナメてんのか?」
拳を強く握りながら、私はソイツを精一杯睨んだ。これで殴ったら、開久に目を付けられてしまうかもしれない。それは勘弁だ。
「何だその目はよォ」
「おい」
静かな低い声がその空間に響いた。不良の背後からだ。目の前の不良から目線をずらすと、昨日の晩から今朝まで、私がずっと理子に話していた人が現れた。
「片桐さん……」
私がその名を呼ぶと、不良の顔が引きつった。
「その女から手ェ離せ」
不良は大人しく手を離す。
片桐さんは私と不良の間に入ると、不良に1発拳を入れた。
「天下の開久がナメた真似してんじゃねェ」
「さーせん!!」
不良は片桐さんに頭を下げると逃げて行った。
「あの、ありがとうございます」
私がそう言うと、片桐さんは私に向き直った。
「お前……昨日の女か」
「あ、はい……私、助けられちゃいましたね」
片桐さんは首の後ろを掻きながら、私を真っ直ぐ見つめた。
「昨日の借りを返しただけだ。アイツは弱いモンにしかイキがれねぇ奴だ。また何かあったら俺に言え」
「そんな……私、昨日のは貸しだとも何とも思ってないので、本当に。今度お礼させてください」
……そんなこと言ってるけど、本当はまた会える口実を作りたいだけだったりする。
「気にすんな。家まで送ってやるよ」
「いや、そんな悪いですよ……それに私これから買い物もありますし」
「また絡まれるかもしれねぇだろ。付き合ってやるから、大人しく俺に送られて帰れ」
ここまで言われると流石に断れなくて、私は「はい」と返事した。
……胸が少しキュッとなったのは内緒。
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こいずみ(プロフ) - 青龍 葵さん» コメントありがとうございます!返事が大変遅くなりましてすみません、、!!久しぶりに更新しました。またお楽しみいただけると幸いです!! (2021年10月21日 23時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。 (2021年5月3日 5時) (レス) id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - hiroさん» ありがとうございます!! (2020年8月18日 11時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
hiro - とても面白かったです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月14日 1時) (レス) id: ed14337de3 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - 豫さん» 果たしてお家デート(?)なのでしょうか!!笑 きゅんきゅんしていただけて嬉しいです〜!! (2020年8月8日 1時) (レス) id: 64da7f082c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こいずみ | 作成日時:2020年7月31日 16時