第四百五十五話 大衆 ページ48
「 だが、ここで大人しくしていられない愚か者もいる。言わば脱獄囚、まあ、かつての私たちの事だな。そういう者は、この安住の地から隔離され、自分ひとりのパレスに閉じ込められる。」
「 それが、『パレスの主』…!」
困惑する私たちに降りかかったのは、彼らからの感謝の言葉だった。
「 お前たちに改心させられて感謝してるよ。ここへ戻ってこられたんだからな。」
私たちが彼らを改心させたせいで、彼らは再び囚われとなった。彼らはそれで満足しているようだったが、この現状を受け入れることは出来なかった。
自分で考えることを放棄する。
それは言わば、『死んでいる』ことと同じ状態だ。
私たちがしてきたことは、彼らをそんな状態にしてしまうことだったの…?
「 下を向くな。」
「 …ジョーカー。」
「 俺たちがやってきたのは世直しだ。」
そうだ。そうだよ。
私たちは自分の正義を貫いてここまでやって来た。
私たちがやってきたことを、私たちが否定してどうする。貫くと決めたなら、最後まで貫き通せ。
「 そうだね、私たちは間違ってない。間違ってるのは彼らを囚われにした、こんなパレスを作った主だよ。教えて。ここの主は誰なの?」
「 おかしなことを訊くな?そんなもの、大衆みなに決まっているだろう。」
「!」
大衆みんなって…
「 学校でも習うだろう。民主主義の国の主は『大衆』だよ。」
「 く、くだらねえ嘘つくんじゃねぇ!だってさっき看守がいやがったぞ。誰かが見張ってやがるってことだろ!?」
「 確かに『見張っている』かもな。我々自身が、我々みなをね。」
「 そんな… 」
「 牢獄を荒らされまいと思っているのは、誰よりも、囚人自身ってこと…?」
囚人を囚人たらしめているのは、他でもない彼ら自身。彼らが考えることを放棄し、このパレスに閉じ込められているのは彼ら自身の意思。私たちが彼らを解放したいと願い、オタカラを奪ったとして。それは彼らのためになるのだろうか。
「 …っ。」
意志が揺れる。望まれなくても、お節介でもやり抜くって決めていたのに。これだから私はいつまで経っても弱いままなのだ。
私は自分の拳を強く握りしめた。
「 こんな野郎の話はどうでもいい。どうせメメントスごと消しちまうんだ、とっとと先行こうぜ!モナ、オタカラは一番奥だよな!?」
私たちは彼の方を見るが、不思議そうに周りを見回している彼とは目が合わなかった。
「 モナ…?」
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すみれ(プロフ) - をしすさん» ありがとうございます!素敵と言って貰えるような作品に少しでもなっていたことを心から嬉しく思います。また描いていただいたイラストの素晴らしさを共有できて良かったです..!これからの展開も楽しんでいただけるように頑張りますので、楽しみにお待ちください♡ (11月4日 7時) (レス) @page50 id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
をしす - (文字数に収まらなかったのでここで失礼します…長文失礼しました) (11月4日 4時) (レス) @page19 id: 79c0c3fdd7 (このIDを非表示/違反報告)
をしす - やっぱり好き…。すみれさんの書くお話はどれも素敵すぎて読み終えた時に不思議な高揚感があります!そんな時にむぎさん、めもりさん、まりりさんの激カワイラスト達を見たらいてもたってもいられずコメントさせていただきました!これからも応援しています。 (11月4日 4時) (レス) @page19 id: 79c0c3fdd7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれ(プロフ) - もみじさん» ありがとうございます🥹久々のコメントがとても身に染みます…!オリジナルの部分を今回はかなり挟んだので、皆さんにどう思われるか少し不安でしたが、そう言っていただけてすごく嬉しいです。この先の展開も楽しんでいただけるように頑張ります! (9月11日 7時) (レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - コメント失礼します。ずっと前からこの作品が大好きです!話の構成がとても上手で、特に『運命を変えろ』のお話はワクワクしっぱなしでした…!!獅童戦やその先の展開がすごく楽しみです。作者様のペースで更新頑張ってください。陰ながら応援しています! (9月11日 7時) (レス) id: be2598a382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみれ | 作成日時:2023年8月19日 11時