歪んだ世界であなたと自由を掴む10【ペルソナ5ロイヤル】

第四百四十七話 私たちにできる事 ページ40

「 獅童の立件が危ういだと！？」

その日の夜、ルブランに集まった私たちが聞いた話は耳を疑うようなものだった。現在、病院に入院している獅童は近々精神鑑定にかけられるとのこと。獅童の告白は精神状況の悪化によるものだと考えられているらしい。

「 そんなわけないのに…！」

「 取り巻き連中が、周りに圧力かけたんだろ。真相が明るみに出ると困る奴らが、思ってた以上に多いってことだな。」

「 どうにもならないの？」

「 獅童の責任を追及しろって世論が高まれば、立件できるかもって、お姉ちゃんが。けどそれも、メディアを使った情報操作でほぼ潰された。事件の主旨を『目に見えぬオカルト』と言い切って、『無かったんだ、惑わされるな』って印象操作… 」

「 結果、この期に及んでも『怪盗団は悪者』ってわけだ。」

私たちのことを信じてくれない人たちに何を言っても届くことはないだろう。目を覚ましてと言っても、本当は違うんだよと言っても。彼らには届かない。

「 どいつもこいつも簡単に騙されやがって！何のために命を賭けてきたんだよッ！」

「 法で裁かれなければ、全て無かったことにされてしまうぞ。」

「 認知を操って、国じゅう意のままに動かせる。これじゃ、パレスの中と変わらない。」

それは絶対に駄目だってわかっている。わかっているけれど、私たちの伸ばす手は振り払われてしまうから。もう意味はないんじゃないかって思ってしまう。

その時、ルブランに仕事終わりの冴さんが到着した。彼女の顔には落胆の念が浮かんでいた。

「 ごめんなさい。有志の精鋭を集めて立件に取り組んだけれど、全部捻り潰された。このままじゃ、獅童の無罪だけじゃ済まない。悪い方向にどこまでも転がり落ちるわ。異世界を利用した犯罪が、国家レベルで継続される可能性がある。」

「 それは… 」

「 いえ、伝えたいのは、事実を知る私たちの身が危険だってこと。正直、拘束は時間の問題よ。たった今踏み込まれても、不思議はない。」

「 ありえねえよ… 」

悪が蔓延り、真実を捻じ曲げられる。人々はそれでいいと自分に言い聞かせ、何も知らないふりをして日常へと帰っていく。

それでいいの？この世界はそれでいいの？
私が生きるこの世界は、そんな間違いが許される世界でいいの？

「 私たちの力では、もう、どうにも…だから、貴方達の力を借りられないかと思って。」

まだできる事があるはずだ。普通の高校生ではない、私たちになら。

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