第四百四十五話 神のみぞ知る ページ38
「 結婚かぁ…蓮はあんの?ケッコンガンボー。 」
結婚。その二文字に私の心はざわめいた。
「 まだ考えたことがない。」
「 俺もだ。まだ先の話だな。」
「 だよな、んな相手もいねーし。女性陣はどうよ?」
今まで考えて来なかったわけではない。いつかこの人と結婚するのだろうな、と思っていた相手もいた。だが、彼はもういない。
「 私はない、かな。」
「 A… 」
みんなも私が何を考えているのかを察したらしく、その場にしんみりとした空気が流れた。私は慌てて「 私は大丈夫だから、気にしないで。」と彼らに言う。こんな所で変な心配をかけたくない。
「 ほら!杏たちはどうなの?」
「 私は…相手による、かなぁ。結婚したいって思うくらい好きな相手に出会わないと始まんないよ。」
「 恋愛音痴の私が結婚なんて… 」
「 引きこもりには超高難易度クエすぎる。」
「 私も婚約破棄をしたばかりだし。そういうのはまだ… 」
年齢で考えればもう結婚はできるとはいえ、私たちには少し早い話だったようだ。おしゃべりもいい感じに収束したので、私は勉強を再開しようとみんなに提案した。
◇◇◇
「 …これで全教科終わったか。」
「 長かった〜!」
真による手堅い部分のみを攻めた指導により、竜司と杏はテスト範囲の内容の理解を深めることが出来たらしい。二人とも満足そうな顔を浮かべていた。
「 終わったあ…後は神のみ…神のみそ…なんだっけ?」
「 神のみそしる?」
「 あはは、『神のみぞ知る』だよ。」
「 こりゃあ、リュージもアン殿も心配だな… 」
知識は一朝一夕では身につかない。長い時間コツコツ積み重ねることによってやっと定着するものだ。それこそ多大な努力を要する。そこまで考えて、私の頭に一人の人間の姿が浮かんだ。
いつも忙しそうにしていたのに、全国模試では決まって上位に入り込んでいた彼。私たちの見えていない所で、どれだけの努力を重ねていたのだろう。
もういない彼の姿を、私は追い続けている。
そんな自分に呆れ、軽蔑する。
「 いい加減執拗いよ。」
誰にも聞かれないようにぼそっと呟いた。
彼のいない世界を、どんなに辛くても生きていかないといけないのだから。彼を求め続けてはいけないだろう。そう頭ではずっとわかっている。
それでも諦めきれないのは、私の心が酷く強情だからだ。
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すみれ(プロフ) - をしすさん» ありがとうございます!素敵と言って貰えるような作品に少しでもなっていたことを心から嬉しく思います。また描いていただいたイラストの素晴らしさを共有できて良かったです..!これからの展開も楽しんでいただけるように頑張りますので、楽しみにお待ちください♡ (11月4日 7時) (レス) @page50 id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
をしす - (文字数に収まらなかったのでここで失礼します…長文失礼しました) (11月4日 4時) (レス) @page19 id: 79c0c3fdd7 (このIDを非表示/違反報告)
をしす - やっぱり好き…。すみれさんの書くお話はどれも素敵すぎて読み終えた時に不思議な高揚感があります!そんな時にむぎさん、めもりさん、まりりさんの激カワイラスト達を見たらいてもたってもいられずコメントさせていただきました!これからも応援しています。 (11月4日 4時) (レス) @page19 id: 79c0c3fdd7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれ(プロフ) - もみじさん» ありがとうございます🥹久々のコメントがとても身に染みます…!オリジナルの部分を今回はかなり挟んだので、皆さんにどう思われるか少し不安でしたが、そう言っていただけてすごく嬉しいです。この先の展開も楽しんでいただけるように頑張ります! (9月11日 7時) (レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - コメント失礼します。ずっと前からこの作品が大好きです!話の構成がとても上手で、特に『運命を変えろ』のお話はワクワクしっぱなしでした…!!獅童戦やその先の展開がすごく楽しみです。作者様のペースで更新頑張ってください。陰ながら応援しています! (9月11日 7時) (レス) id: be2598a382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみれ | 作成日時:2023年8月19日 11時