第四百四十二話 勝利の祝杯 ページ34
「 今回の当選は、国民の皆々様のお力添えの賜物と、身に染みる思いでございます!」
後日行われた選挙の結果は、総理就任が確実と言われていた獅童正義の勝利だった。選挙後の会見に国民の誰もが見入っている。彼の言葉は今や、日本中を動かす影響力を持っているのだ。
「 それだけに… 」
そんな人物が大きな罪の告白をする。
「 それだけに私は、自分が許せないのです…!」
そんな大事件、世間が注目しないわけがない。
「 奥村氏が他界したのは、いや、氏を葬ったのは、私です。一連のショッキングな事件を、怪盗団の仕業だと情報操作したのも、この私です。人の心を操作し、自分の手を汚さぬまま多くの被害者を生み出していたのは、私なんです。」
「 すべては、私自身の出世…いや、私利私欲の為でした。私は、国家という船を我がものにする野心のため、人の命すら、踏み台にしてきた…どんな罪状で裁かれても足りぬ、大罪人なのです!」
「 全て、告白します!みなさん、どうか私を裁いてください。この命を持って償えるなら、今すぐにでも、裁いて、欲しい… 」
獅童の関係者と思われる人物たちが焦りの表情を浮かべていた。会見を中継していたテレビは即座に番組を停止する。だが、もう遅い。国民は彼の裏の顔を、彼自身の言葉で知ってしまったのだから。
「 え…!?ちょっとなに、獅童さん!?」
「 うそだ!獅童さん!!」
◇◇◇
「 いよっしゃあ!!」
「 みんな、グラス持て。」
ルブランに集合した私たちは、久しぶりに改心成功の打ち上げパーティーを開催していた。勝利の祝杯だ。
「 じゃあ、せん越ながら…この度は… 」
「 仕切り出した。」
「 まあそう言わないで。」
「 文句あんなら獅童に言え。議員バッジなんか、二束三文だからな。」
獅童にとって議員バッジは欲望の始まりと言えるほど大きな価値があったようだが、世間からしたらそうでもないらしい。売ったとしてもこれまでのオタカラのような値がつくようなものではなかった。
「 じゃあ、その、諸悪の根源、獅童正義をついに… 」
「 お母さんの仇、とれた、みなさんの、おかげ、です… 」
「 私も、お父様の…無念を、晴らせました。」
「 頑張ったよね、みんなね… 」
私も、彼に思いを馳せた。
獅童はちゃんと改心させたよ。これからは、あなたのように彼のせいで苦しむ人は出ない。もう、大丈夫。だから、安心して見守っていてね。
私は彼を想って目を閉じた。
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すみれ(プロフ) - をしすさん» ありがとうございます!素敵と言って貰えるような作品に少しでもなっていたことを心から嬉しく思います。また描いていただいたイラストの素晴らしさを共有できて良かったです..!これからの展開も楽しんでいただけるように頑張りますので、楽しみにお待ちください♡ (11月4日 7時) (レス) @page50 id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
をしす - (文字数に収まらなかったのでここで失礼します…長文失礼しました) (11月4日 4時) (レス) @page19 id: 79c0c3fdd7 (このIDを非表示/違反報告)
をしす - やっぱり好き…。すみれさんの書くお話はどれも素敵すぎて読み終えた時に不思議な高揚感があります!そんな時にむぎさん、めもりさん、まりりさんの激カワイラスト達を見たらいてもたってもいられずコメントさせていただきました!これからも応援しています。 (11月4日 4時) (レス) @page19 id: 79c0c3fdd7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれ(プロフ) - もみじさん» ありがとうございます🥹久々のコメントがとても身に染みます…!オリジナルの部分を今回はかなり挟んだので、皆さんにどう思われるか少し不安でしたが、そう言っていただけてすごく嬉しいです。この先の展開も楽しんでいただけるように頑張ります! (9月11日 7時) (レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - コメント失礼します。ずっと前からこの作品が大好きです!話の構成がとても上手で、特に『運命を変えろ』のお話はワクワクしっぱなしでした…!!獅童戦やその先の展開がすごく楽しみです。作者様のペースで更新頑張ってください。陰ながら応援しています! (9月11日 7時) (レス) id: be2598a382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみれ | 作成日時:2023年8月19日 11時