歪んだ世界であなたと自由を掴む10【ペルソナ5ロイヤル】

第四百三十六話 甚だしい ページ27

「 一握りの犠牲者の命と、国家そのものの命。比べるまでもなかろう？己の幸福以外は『自己責任』という名の他力本願。そんな愚民どもの願いを叶えてやるんだ。それが神に選ばれた、この私にしか成せない『世直し』だ！」

彼の言う二つの概念はそもそも天秤にかけるようなものではない。自分はこの国の全てを担っている神だと思い込んでいると感じるほどの自負。

「 自分以外の人を、そんな風に見下すなんて… 」

「 子供に殺人を命じる指導者なんて、絶対認めない！国のためとかいって、全部自分のために決まってる。そんなの、誰も望んでない！」

望んでいない、その言葉にシドウは反応した。

「 望んでいない？ならば、なぜ私は選ばれた？
なぜ私に総理の椅子が明け渡された？

今や誰もが地道な努力を否定し、抜け駆けや一攫千金ばかり闇雲に追いかけている。だから、私が最強国家を樹立してやるんだよ。誰にもひれ伏さず、揺るぎない最強国家だ。」

彼の主張に笑いが込み上げてくる。政治家で総理大臣候補とは言っても、彼も所詮は人間。神のように高尚な存在ではないのに。

もういいだろう。言ってしまえ。

「 ふふ。吾郎はずっと人形(マリオネット)だったんだね。本当に馬鹿だな… 」

「 ふはは、婚約者にも見限られるとは。まあその婚約も、奴お得意の嘘だから仕方があるまい。本当に空っぽで哀れな人形だ。」

「 あははっ、可笑しい。」

吾郎のことを散々馬鹿にしているようだが、自分の立場をわかっているのだろうか。順風満帆に事が進んでいるから忘れているようだ。それならば教えてあげよう。

「 貴方が今立っている場所も、地位も。全て誰かに与えられた仮初のもの。貴方自身で手に入れたものは何一つない。なのにそんな風にふんぞり返るなんて。」

ああ、可笑しい。

「 勘違いも甚だしい。自分に酔うのも大概にして。貴方は滑稽な、ただの愚かな生きものでしかないんだから。」

「 …もう少し考える頭があるかと思ったが、愚民は愚民か。」

「 じゃあ、その愚民に選ばれた貴方は暗君ね。」

もう、語る言葉は必要ない。奴は私たちが何を言おうが決して自らの意見を曲げない。なら、拳で語り合うしかないだろう。

「 私の国家にお前たちのような賊はいらん。取るに足らん小さな綻びだが、そんな甘さで大国すらも滅びる。私は、そういうミスはおかさない。」

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