歪んだ世界であなたと自由を掴む10【ペルソナ5ロイヤル】

第四百三十五話 冷めた怒り ページ26

本会議場は静まり返っていた。その最奥に立ち竦んでいる人影を見つけると、私たちは鋭い目つきで睨みながらその背中を追いかけた。

シドウマサヨシ。

「 てめえ！」

「 貴様ら、いったい、どこで力を手に入れた。まあいい。文句があるなら聞いてやる。」

騒ぐ子供をあやすような態度に苛立ちが募り始める。

「 お前、明智を利用した挙句、何をした！アイツは、お前の実の息子だったんだぞ！？」

「 そんなところだろうとは思っていた。あの女の面影があったからな。ヤツが近づいた理由も察しがついてる。私を嵌めるつもりだったんだろう？」

フン、と奴は笑う。私が愛した彼を愚弄する態度だった。

「 頭は切れるが、所詮はガキだよ。適当に褒めて手懐ければ、自在に踊る。私が総理に就任したら、即刻、消すつもりでいた。」

「 なんだと！」

「 アイツは私の過去を知っているんだ。生かしておくわけがなかろうが。しかし、さすが自作自演の名探偵様だな。ずっと傍にいた私の考えも見抜けぬとは。自滅してくれて手間が省けたがね。」

不思議なことに、私の脳は冷静だった。怒りが頂点まで達して、一定の温度を保ち続けている、と言った方が正しいのかもしれない。何にせよ、目の前の下衆に言ってやりたい言葉は見つかった。

だが、まだ駄目だ。それを言うのはみんなが奴に言いたいこと言ってからでないといけない。

「 お母さんの研究を奪って、命まで奪った！」

「 自分の利益のために好き放題して、人をなんだと思っているの。私のお父様まで…！絶対に、許さない。」

わかっていないな、とでも言いたげな様子でシドウは息を吐く。

「 改革に犠牲はつきものだ。愚か者は優秀な人間に委ねていればいい。この私が、導いてやるよ。」

「 テメエのどこが優秀なんだよっ！」

「 明智の助けがなかったら、ここまで来れなかったくせに！」

「 明智が現れたのも、神が私に期待してるからだ。私だから、明智のあの力も、有用に使えたんだ。」

喉の奥がキュッと締まる感覚。頭の中は冷静。だがこめかみの辺りに強い熱を感じる。私はその熱を体外に出すように、息を大きく吸って、吐いた。まだ抑えなくてはいけない。

「 貴様らのやってきた『改心』とやら…大衆を熱狂させ、暴走させただけではないか？」

「 何を勝手な！真っ当なやり方じゃ勝てない負け犬が、汚い手を使ってのし上がっただけだろ！？」

「 貴方なんかに人の上に立つ元首の資格はない。貴方のような犯罪者が。」

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