歪んだ世界であなたと自由を掴む10【ペルソナ5ロイヤル】

第四百二十九話 絶望のおすそ分け ページ18

ああ、すごくいい気分。なんだか、無性に何かを傷つけたい衝動が湧き上がる。

「 ふふ、ふふふ… 」

これが精神暴走。頭の中の雑音が半端じゃない。苦しいようで、何故か楽しい。自分の感情の行方が分からなくなってしまうほど、もう全てがぐちゃぐちゃだ。

「 貴様ら…っ！」

獅童の認知上の明智吾郎が、その不細工な顔を歪めて何か言ってる。あー、ダメダメ。ここは私たちが主役のステージなんだから。

スポットライトが私たちを照らす。

「 脇役は、下がってなよ。」

「 骨まで、ぐっちゃぐちゃに刻んでやる。」

彼が動き出す。彼が地面から敵を蹴りあげると、空中には私が先回りしている。私はバスタードソードを持って、敵を地面に叩き落とすだけでなく、その身体に何度も傷をつけた。

アルファベットのAの文字を身体に刻む。だんだん楽しくなってきて、いつの間にか私は笑っていた。この残虐な行為が、私に快楽を与えている。

「 あはは！もっと、もっと…ッ！」

そして再び、今度は彼がサーベルを持って敵を空中に斬り上げる。ギザギザな刃を持つノコギリサーベルに斬られると、シャドウは血飛沫をあげる。だが、彼にとってはそんなこと知ったこっちゃない。

「 殺す殺す殺すぶっ殺すッ！！」

まさに混沌(カオス)。彼らの攻撃に為す術なく、シャドウは次々に消滅していく。最後に残ったのは、哀れなお人形。

「 あれ、まだいたんだ。」

「 とっとと死になよ。」

空中にいた私も彼の元へと降り立つ。

さあ、絶望のおすそ分けだよ。
受け取って。

彼の銃弾が奴の身体を貫く。それは一度のみならず、何度も何度も。身体が原型を留めないほど、穴を開けたところで最後の一発。

「 じゃあね、ニセモノ。」

私のスコープの弾丸が、奴の脳天を貫いた。


◇◇◇


ゴホッと咳をした。私は手に付いた血を、現実感のないもののようにぼんやりと見る。

水密隔壁内にいたシャドウは全て消滅させた。これで、あの時見た未来が変わるはずだと安心する。その安心感は、私の身体の力を全て奪ってしまった。

「 A…？」

ごめんね、吾郎。あなたの方が苦しいはずなのに。
意識が…なんだか上手く保て、なくて。

私はその場に倒れた。彼が私の名前を呼ぶ声が、どんどん遠ざかっていく。身体が寒くて、息ができないほど苦しい。

でも、あなたが生きていてくれて本当によかった。

私はゆっくりと目を閉じた。

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