歪んだ世界であなたと自由を掴む10【ペルソナ5ロイヤル】

第四百二十七話 運命を変えろ ページ16

これは、私が彼に突き飛ばされた瞬間に見た『記憶』だった。私は魔法にかけられたかのように、ゆっくりと進む時の中にいた。

私が見た記憶は、彼に背中を押されて、そのまま水密隔壁の外に出てしまった未来。今から起こりうる可能性が、最も高い未来。

『 運命を変えたいか。』

私の脳に直接響く、誰かの声。誰なのかも、何の目的でそう言っているのかもわからない。だが今の私には、その声に縋るしかこの状況を切り抜ける方法がなかった。

「 変えたい！私は、彼と一緒に、自由を…！」

『 ならば思い出すのだ。お前のペルソナが忘れし、真の能力を。』

私のペルソナ…？

エアリエルは、何かを忘れている。彼(・)はそう言った。私は以前に図書室で読んだ『テンペスト』を思い出す。

エアリエルはその話において、常に支配されていた。
最初は、魔女に。そして次に、_____という男に。

エアリエルは物語の冒頭、主人である_____に命じられ、とある船を難破させる。魔法を使って、操ったのだ。

海を？波を？風を？
否、その全てに当てはまるものだった。

「 ________。」

私はそれを言葉として紡ぐ。

その瞬間、身体が勢いよく持ち上げられる感覚がした。今までのエアリエルからは考えられないほどの大きな力だ。ゆっくりと進んでいた時が、元に戻るかのように速さを取り戻している。

吾郎が私の背中を押した力と、エアリエルの起こした魔法がぶつかり合う。二つの勢力の衝突に打ち勝ったのは、

『 エアリエル。お前の新たな主は実に面白い。わしとこの怪物は、もうしばらくここでお前の戦いを見物させて貰うぞ。』


◇◇◇


青い蝶々が舞っている。


貴女は本来、このゲームに巻き込まれるはずではなかった人間。故に、貴女の選択がこの物語の全てを変える。

貴女は異端者(マーベリック)。

私が呼び出した、異端者よ。
お願い、破滅の運命にある者たちを救って。

定められた運命から抗い、自らの望む未来を勝ち取るのです。これは、かの者の制御下に置かれていない貴女だからこそできること。

さあ、望みなさい。
抗いなさい。

これは誰のものでもない。
貴女の物語。

この歪んだ世界で、自由を掴むと決めたのなら。
貴女の力で運命を変えるのです。

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