歪んだ世界であなたと自由を掴む10【ペルソナ5ロイヤル】

第四百十二話 不安の芽 ページ1

「 よし、紹介状。…お前、偽メジエド以外にも、何か悪いことしただろ？一番秘密のこと、教えろ。」

「 『認知訶学』の研究だ… 」

「 言えっ！何した！」

母親の研究に関する内容に、ナビは目の色を変えた。

「 研究結果のデータを抜いた後、表向きは全部削除した。それを暗号化し、極秘データとして、一般人がアクセスできない領域に置いた。勘違いしないでくれ。私は廃人化については知らない。」

だが、彼にその行動をさせたというなら、そこには何か意味があるのだろう。認知訶学を利用した何か。それこそ、廃人化のようなことを起こそうとしているのではないかと、私は考えた。

「 悪用させるかっ！」


◇◇◇


帝急ビル銀坐線乗り場。
明智は獅童と電話を繋いでいた。

「 どのメディアも『獅童総理』に太鼓判ですね。国民の期待も、ますます高まってるようです。」

「 ここまで来られたのも、お前のお陰だよ。まさに二人三脚だったな。」

「 ……光栄です。」

「 そこで、一つ頼みがある。廃人化ビジネスの上客たちだが、お前の不審だと思うヤツを、まとめて始末してくれないか？」

「 今、このタイミングでですか？」

連続の不審死は世間の注目を集める。そのため、廃人化を行う際はいつも数週間は期間を空けて行ってきた。この人もそれはわかっているはずだが。

「 そうだ。早ければ早いほど良い。」

「 どうして急に…何かあったんですか？」

「 いや、何もない。ただ、事が起きてからでは遅いだろう。」

「 ナーバスになるお気持ちはわかりますが、焦らず、選挙後でもいいのでは… 」

「 総理就任前に、ゴミは綺麗に片付けておきたいのだよ。完全なる勝利のために、不安の芽は、全部摘み取っておく。」

不安なんて言葉がこの人の口から出てきたことに驚いた。彼に言ったようにどのメディアも彼に太鼓判。国民の期待も高い。そんな彼の選挙の『勝ち』はほぼ決まったも同然だというのに、何を不安がる必要があると言うのか。

「 不安って、今までそんなこと一度も…獅童さん、あの… 」

「 私に刃向かうことの意味、わかっているのだろうな！？お前は私の言う通り動けばいい。頼んだぞ。」

根拠の無い不安感が押し寄せているのだろうか。だが、それにしても突然すぎる。この急変具合は異常だ。まるで、心を変えられたかのような、

「 …まさか。」

最近、彼女を見かけなかったのはそういう事か…！
明智は舌打ちをし、国会議事堂へと足を向けた。

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