第五百五十話 理屈じゃ割り切れない ページ46
約束の日が訪れた。Aらは予定時間の少し早くに競技場建設地へと赴く。そのためか、まだそこに蓮の姿はなかった。
「結局、君の仲間は使い物にならなかったね」
彼の正直な言葉。オブラートに包むということをまるで知らないような、直球な言葉だ。Aは胸をもやっとさせるが、下は向かなかった。彼女もまた、素直な言葉を彼へと投げかける。
「ううん、そんなことない。みんなはきっと目を覚ますよ」
「そう言える根拠は？」
「私たちは、苦しみがあって出逢えたから。それを失くすことの重みは…みんなはわかっているはずだから」
「…あまり根拠にはなってないけど」
わかってる、と困ったように小さく頷く。彼の言葉はいつも正しい。でも正しさだけでは人の心は片付けられないことをAは知っている。
「理屈じゃ割り切れない。この気持ちは、吾郎もわかるでしょ？」
「……」
無言の肯定だった。彼が未だに獅童への復讐の炎を消しきれないでいるということも、Aが怪盗団の仲間に一縷の希望を抱いているのと同様に、実際には意味の無いこと。だが理屈じゃ割り切れない、どうしようもないことだってある。
＿＿＿馬鹿らしく思われてしまったとしても、これが本音なんだからしょうがないよね。
「待たせたな、二人とも」
「蓮！ひさし…ぶりではないね」
だが去年はほぼ毎日会っていた為か、久しぶりという感覚は拭いきれない。Aは頬を紅潮させ、見えない尻尾を揺らしながら彼へと近付いた。
「蓮はどうだった？みんなと話をして」
「Aと同じだよ。すぐに目を覚ましてもらう…なんてことは叶わなかった。でも、俺はみんなを信じているから」
蓮の言葉にAは笑顔にならざるを得なかった。彼の言葉はAの心をいつも優しく包み込んでくれる。
「君らって、本当に温い関係だよね。まあ、そんなことを言っていても仕方ないか。それが君たちなんだろ？」
「わかってきたじゃないか、明智」
「こういうのは『諦め』って言うんだよ」
吾郎の言葉とは違った心地良さだった。蓮は優しさで導いてくれるのに対し、吾郎は痛みで導いてくれる。どちらもAにとっては先を照らしてくれる光のような存在だ。
「準備はできてる？行けば丸喜と戦闘になる可能性が高い。まだのようなら…」
「とっくにできてる」
彼の言葉を遮って、そう言った。戦闘の準備も、覚悟も。全てとうの昔に決まっている。今更怯えるものは無い。
「そう。なら、行くよ」
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
