第五百四十七話 悪くない ページ43
目を覚ました頃には登っていなかった日が、今日の服装に悩んでいると徐々に姿を現し始めた。快晴だった。絶好のお出かけ日和としか言いようがない、本当にいい日の始まりだった。
「おはよう」
「おはよう、吾郎」
身なりを整えた吾郎との対面。同じ家に住んでいるのだから、当たり前と言えば当たり前だが何故か緊張してしまう。それは昨日の彼の言葉に起因していた。
＿＿＿君の明日を僕にくれって、なんかプロポーズみたいだった。
思い出しては顔を赤くしてしまう。緩んでしまう顔を引き締めるために、Aは顔をぱしっと叩いた。
「…髪、下ろしてるんだね」
「あ、うん。お出かけだから少し気分を変えたくて。…どう、かな」
「どうって何が」
「……似合ってる？」
彼に詰め寄る。普段は素直になることが少ない彼。そんな彼から言葉を引き出すには半ば強引にするしかない。じっと彼の茶色の瞳を見つめた。
「悪く、ないんじゃない」
「！」
「その顔なに」
「えへへ、ごめん。嬉しくて、にやけちゃう」
「君って本当にこっちが心配になるくらい単純だよね」
「好きな人にそんなこと言われたら単純にもなっちゃうよ」
はい論破。とまでは言わないが、饒舌な彼の口を詰まらせることに成功したAは「ふふん」と目を細めて笑った。
「…そんな顔し続けるつもりなら、置いていくから」
「わあ、理不尽だ」
「なんとでも言いなよ。ほら、いいから早く行くよ」
彼から差し伸べられた手をキュッと握った。
◇◇◇
彼が最初に行おうとしていた調査というのが、街の異変の確認だった。丸喜が創る認知の影響を街の人々や街自身がどのように受けているかを、その目に焼き付けたいとのこと。やって来たのは、吉祥寺。
「やけに歩く人々の顔が緩んでいるな」
「みんな幸せそうだね」
会話に耳を傾けてみる。「毎年、年末は海外行くの。もちろん家族とね」「実家に戻る！？この前まで絶対夢叶えるって…」「学校？そりゃ楽しいよ。クラスも皆仲良いし」「あそこの店、潰れたんじゃ？いや、そんなことないか…」などと行き交う人々の声を耳に入れる。
「これが丸喜の言う『幸せな現実』、ね」
「吾郎はこの現実が幸せだって思う？」
「答えるまでもない質問だね」
彼の答えは分かりきっていた。でも聞きたかった。彼がどのようにこの世界を否定するのかを。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
