第五百三十八話 これでいいのか ページ34
『杏が志帆と一緒に笑っているのも、竜司が陸上部にいるのも、祐介が斑目に師事していることも、モルガナが人間になったことも、三人の傍で大事な人が生きていることも…幸せなことだとはわかっている。でも、いつもこれでいいのかって思ってしまう』
「…うん」
『俺たちは『幸せ』では出会えなかった。言葉にすると悲しいけど』
「ううん、私もそう思う」
この世界を受け入れるということは、自分たちの今までを否定することになる。それは嫌だって、思ったはずだ。
『結局はエゴでしかない。それでも、俺たちは正しいと思ったことを貫き続けるんだ』
「そうだね。いつも、そうだったよね」
怪盗団として活動して、世間から批判の声をその身体いっぱいに浴びた時も、信じる正義を曲げたりはしなかった。あの頃も、今も『誰かのために』と行動しているが、結局は自分のためなのだ。自分がそうしたいから、そうしているだけ。そこに大層な理由なんて存在しなくていい。
誰かのためと思うから揺らぐんだ。
＿＿＿このままじゃダメだって思うから、行動する。これはみんなのための行動じゃなくて、私のための行動だ。
自分勝手だと思われたってかまわない。この気持ちなら揺るがずに持っていることができる。
「うん、吹っ切れた。もう大丈夫」
『…伝わってくるよ』
彼のその言葉に思わず笑みが溢れる。「いつもありがとう」と伝えると、画面越しに彼も同じ表情になったんじゃないかと思うほど優しい声で彼は返事をした。
「本当にありがとう。おやすみ、蓮」
『ああ、おやすみ』
通話終了のボタンを押し、ふぅ…と息をつくとその様子をお風呂を上がったばかりの吾郎が見ていた。思わずビクリと肩を揺らしてしまう。
「今の電話、蓮？」
「そうだよ。話、聞いてもらってて」
「ふうん…」
彼は何も言わず、Aの隣に腰をかける。そしてその体重を気にすることなくかけてきた。まるで幼子がするような行動にAは驚きを隠せない。
「吾郎？」
「…別に何もないけど」
「まだ何も言ってないよ」
＿＿＿もしかして嫉妬？
なんて言葉を口にしたら怒られてしまうのはわかっているから黙ったままでいる。でも、言葉にせずとも行動で甘えてくれる彼が愛おしい。Aは少し湿ったその髪を優しく撫でる。
「ちょっと」
「少しくらい許してよ。そうだ、頭乾かしてあげるよ」
「…余計なお世話だ」
という彼の言葉を無視して、髪を乾かしたというのはまた別のお話。
第五百三十九話 嘘はつけない→←第五百三十七話 強さだけじゃない
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
