第五百三十五話 苦しみが出会わせる ページ31
休日であるからか、いつもより人の数が多いように感じる美術館。Aは見覚えのある、ここにはないはずの絵とそれを見る祐介を二階から見つけた。
＿＿＿祐介。
Aは複雑な心情でありながらも、彼に近付いた。自分がしている行動が結果として何の意味もなくとも、行動することをやめることはしたくなかった。
「A、来てくれたのか。こちらから連絡しようと思っていたんだ。見てくれ」
「…これ」
それは本来ならばルブランで静かに飾られていたはずの絵。祐介の母が作り上げた、息子への愛情に溢れた素敵な絵。彼が絵描きとしての道を志すきっかけとなった絵だった。
「母さんの絵がようやく評価された。今週いっぱいまでの展示だからな、お前にも見て欲しかったんだ」
「…本当に素敵な絵、だね」
「そうだろう。俺は幸福な人間だ。この作品に焦がれ、魅了されて、いつか日の目を見ることを願ってやまなかった。大恩ある師の尽力のおかげで、それも叶い、同じ師に支えられて、俺も絵を学んで行けるんだ。これ以上の幸福がこの世に存在するものか」
「尽力って誰の…」
「決まってるだろう。斑目先生だよ」
＿＿＿斑目に関する認知も、変えられてる。
「先生は、母の死後も諦めず、この絵の素晴らしさを説いてくれた。それどころか身寄りのない俺を引き取り、面倒まで見てくれて…本当に感謝の念に堪えないよ」
彼の幸せそうな表情を見ると、これは元の現実でも彼が望んでいた展開だったということが容易にわかる。A自身もそうだったらどれほど幸せだっただろうと考えた。斑目は祐介にとって良い師であり、祐介の母の絵が彼女の絵として世間で評価される。幸せ、確かに幸せだ。
＿＿＿でも、もしそうだったら彼はペルソナを覚醒させてない。
これは他のみんなにも、自分にも当てはまること。あの悔しくて、情けなくて、でも立ち上がりたいと思った気持ちがなければ、怪盗団にはなれなかったし、そもそも出会えていなかった。
＿＿＿私たちは『苦しみ』があるから、出会えたんだ。
Aは物憂げであるが優しさも含まれている、そんな目でサユリを見ながら口を開いた。
「本当に素敵な絵だよね。祐介への愛で溢れてる」
「そうだろう。お前ならわかってくれると思っていた」
クスッと笑い、Aは小さく頷く。その素晴らしさは知っていた。元の現実で祐介が何度も何度も教えてくれたことだから。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
