第五百二十五話 そうじゃないこと ページ21
「…話すだけ無駄だな」
「…今は、そうみたいだね」
「そうなると、力でわかってもらうしかありませんね」
「暴力は、気が乗らないけど…」
丸喜が隣の屈強なシャドウに目を向けると、奴が動き出した。コツコツと足音を鳴らしながら、丸喜とリティたちとの間の距離をゆっくりと縮める。
肩の関節が外れたかのような動きをした。足取りもだんだんと覚束無い酔っ払った人間のようなものへとなってくる。血にも似た青い液体を顔から垂れ流しながら、その形状を変える。
「綺麗事も、言っていられないか…」
シャドウの巻き起こした風は凄まじく、後ろへと吹き飛ばされてしまった。どうにか地面へと掴まり、転げ回ることは阻止できたが見る限り、相手はかなりの手練だ。
「ここは俺とクロウでどうにかする。リティはすみれの所へ」
「でも…！」
「まさか、僕たちが負けるとでも思ってる？」
彼ら二人に『負け』という文字があまりにも似合わなくて、リティは思わず「あはっ」と笑ってしまう。彼らの言う通り、心配はご無用なコンビだ。
「ないね、絶対に。わかった、すみれちゃんは私が取り戻す」
「後ろは気にするな。ただ前だけを見てろ」
こくりと頷くと、リティは大きく右へと走り出す。その背中にシャドウは狙いを定めるが、「お前の相手はこっちだ」とクロウが銃を使って、気を逸らさせる。
リティはシャドウの長い触手を避けながら、すみれを横抱きにしている丸喜の元へと向かう。
「すみれちゃん！」
「秋瀬さん…」
丸喜は簡単には捕まろうとしなかった。彼自身も多くの触手を操り、リティの動きを封じようとする。彼女は二体のペルソナの能力を駆使しながらそれを避ける。だが防戦一方で、近付くことすらできない。
「邪魔…です！」
「僕の現実がなくなれば彼女だけじゃない、君にも無慈悲な現実が待っているんだ。ねえ、痛みに自分から向かわなくてもいいんだよ」
「痛みを乗り越えることは、慣れていますので！」
触手を剣で切り裂き、少しずつ前へと進む。次々に現れるそれを薙ぎ倒すのは骨が折れるが、これが様々な戦い方を試してきた中で最適な方法だった。
「乗り越えてるつもりでも、そうじゃないことってあるんだよ、秋瀬さん」
彼が突然目を見開いた。その瞳に吸い込まれるような感覚があり、身体の制御権を奪われる。そして丸喜は一本の触手をリティの頭に巻き付かせ、とある記憶をフラッシュバックさせた。
第五百二十六話 記憶を呼び起こす→←第五百二十四話 優しい狂人
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
