第五百二十四話 優しい狂人 ページ20
「彼女を責めないでくれ。それほど、彼女にとって現実は辛いんだ。君たちは僕の創った現実に疑問を感じ、ここまでやって来た。けどね、僕が救いたい人々の中にはもちろん君たちだって入ってる。雨宮くん、君にも聞くよ」
優しい言葉だ。自分ではない誰かの幸せを考えて、行動してくれる人。私利私欲のためではなく、その行動はあくまで誰かのため。だが、行き過ぎた優しさはやがて狂気となる。
「君の幸せのためにも、僕の創る現実を受け入れてはくれないか？」
「幸せは自分で決める」
彼が言った言葉をまるで自分が口にしたかのように、リティは深く頷いた。誰かに決められた幸せなんていらない。彼女ら三人は同じ考えで一致していた。
「それが、君の答えか」
カチという音と共に上部の照明が明るく点灯した。暗闇からの突然の光に目の前がチカチカとする。あまりの眩しさに全員が目を細め、丸喜に隙を見せてしまった。
丸喜の隣でオブジェのように黙って立っていたシャドウが動き出す。腕を軟体動物のようにうねらせ、触手のようなものを放出した。それはすみれを目掛けて飛んでくる。
「きゃあっ！」
ぐるぐると彼女の頭までも包み込み、やがて高く跳躍した。すみれの甲高い悲鳴が聞こえるが、すぐに気を失ってしまったようで、その声は聞こえなくなる。
「すみれッ！！」
「その子をどうするつもりです？」
「どうもしない、ただ君たちの傍には置いておけない。彼女が『かすみ』であることを望む現実…その現実を受け入れられない君たちとは」
「『彼女』を返せ」
「そんな悲しいことを言わないでくれ。その言葉は、彼女の居場所を否定することなんだぞ？」
「だからって、こんな…！」
＿＿＿こんなの間違っている…！
「居場所ね…」
「彼女だけじゃない。君たちの居場所でもあるんだよ？僕の現実を受け入れない君たちと分かり合いたい。君たちにも、願いはあるはずだろう…？僕ならそれを叶えられる。幸福な現実を見せてあげられるんだ」
彼の笑顔は柔らかい。だが彼をクロウが言いそうな言葉で表すのなら、「自分の言葉に酔っている」というのが適切であろう。あまりに行き過ぎた優しさ。彼はもうただの優しい丸喜先生ではない。優しい狂人だ。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
