第五百二十二話 救いとは ページ18
「そうだよ。僕には当時から、局地的にだけど彼女の願いを実現する力があったからね。自分を庇った姉が亡くなって、自分だけが助かってしまった『すみれ』さん…彼女の罪悪感や心の傷を、一体誰が癒せるって言うんだい？」
なんて意地悪な質問なんだろう。そんなの、誰にもできないに決まっているじゃないか。彼女の心を救うことができるのは、彼女自身の心を縛り付けている芳澤すみれだけなのだから。
「『すみれ』さんが『かすみ』さんになることで、罪の意識を忘れて前向きに生きられるなら、僕はその現実こそが、彼女の幸せだと思うんだ」
「そういう建前はもういい。お前は、自分の研究の価値を認めさせるために、彼女を利用しただけだろうが」
＿＿＿そう、なのかな。もしそういう理由があったとしても、それだけじゃない気がする。
「君の目にはそう映ってしまうんだね…残念だよ。もちろん、僕はこの認知訶学の研究を世間に認めてもらいたかった。でもそれは…芳澤さんのような思いをする世界の人々を救うためなんだ！」
「……！」
「僕の研究は、その人が望んだ願いを現実にする…そして研究は今、まさに実証されている…これでもう誰も、理不尽で無慈悲な現実に苦しむことはなくなるんだ」
理不尽で無慈悲な現実がなくなる。弱い人々が苦しむ世界ではなくなる。それは、怪盗団が求め続けていたものに近しいのかもしれない。言い表しようのないくらい、素晴らしい世界なのかもしれない。でも、どうしてだろう。
＿＿＿なんでこんなにも腑に落ちないの。
「このパレスは、主の欲望が形として現れる場所、だったね。僕の研究で苦しんでいる人たちを救いたい…言うならば、それが僕の『欲望』かな」
「馬鹿げてる…」
「そうかもね。それでも僕は、本気で元の現実を変えるつもりだ。彼女が『かすみ』になることで救われたように、苦しんでいる人々を救うよ。それが僕の使命なんだ…この世界は、その役目を僕に託したんだよ」
「それは本当に救いか？」
「残酷な事実は消え、幸せな認知の中で人々は生きる…それが救いでなくてなんだっていうんだい？」
リティは地面に蹲るすみれに目を向ける。彼女は本当にそれで幸せになれるのだろうか。真実を求め、前へと進もうとした彼女の行先は自分ではない誰かを演じることなのだろうか。
＿＿＿そうであって欲しくない、というのは私の我儘だ。決めるのは、彼女だもの。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
