第五百二十話 コンプレックス ページ16
美しくリボンを自在に操るかすみ。
「かすみに…かすみみたいに、私もなれたら良かったのに」
コーチから柔らかい表情で褒められているかすみ。その言葉に心から喜んでいるかすみ。
「…みんなが望んでいるのは、かすみ」
全てが彼女のコンプレックス。かすみという存在自体が、彼女のコンプレックスだった。
雨の中、前も見らずに足早に進んでいく。かすみの制止する声すらも聞かず、感情の昂りのままに進んで行く。
優勝トロフィーを持って観客に手を振るかすみ。自分を見て、楽しげにピースをするかすみ。
「世界を狙える、強いかすみ。」
「待って！止まってよ、すみれ！」
赤信号であることにも気付かず、彼女の声も聞かず。進み続けた先に待っていたのは。
「すみれっ！」
背中に強い衝撃を受けて、弾き飛ばされた。かすみの必死そうな表情と車のクラクションを耳にすると、すみれの視界は真っ黒になった。
手に持っていた紫色の、すみれ色の傘が宙を舞う。
ゆっくりと片目を開けると、ずっと前の方に横たわるかすみがいた。周囲の人々がしきりに「救急車」という単語を呟いている。何が起こったのか、状況が掴めない。自分は怪我をしたのだろうか。すみれはゆっくりと身体を起こし、顔を上げた。
「あ…あ…」
無傷だった。身体を少し打ち付けたくらいで、何の支障もない。問題があるのは、かすみの方。
雨のふりしきる中、地面に赤い花が咲いた。かすみの頭を中心に、その花はみるみる広がっていく。
「かす…み…」
悲劇という言葉を体現したかのような結末で、この映像は終わった。リティにはこの映像は作り物であるとは思えなかった。隣にいる彼女の震えがそれを証言している。
「あ…あ…」
変身が解け、元の冬服姿へと変わる少女。外はこんなにも寒いのに、彼女のおでこにはびっしりと汗が溜まっている。頬を伝い、涙のようにそれは流れ落ちる。
「あ…あ…」
変身が解けた衝動で彼女のリボンがほどかれる。高いところで結んだ髪を下ろした少女は、雨が降る中、かすみが息絶える様子を見るしかできなかった彼女そのものだった。
「私…は…」
「…思い出したみたいだね」
彼女の過去の記憶を見たからわかってしまう。彼女の名前は芳澤かすみではない。芳澤かすみは、あの春に起きた事故で亡くなった。ならここにいる芳澤は誰なのか。
答えは彼女が教えてくれる。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
