第五百十八話 創られた現実 ページ14
声が似ている人なんて、この広い世の中、探せばどこにだっているはずだ。だが何故か、この声の主は彼であるとリティの心が、Aの心がそう言って聞かなかった。
＿＿＿姿を見れば、わかることだから。
白いスーツに白い手袋。オールバックで髪の毛をピシッとまとめている。このパレスの主らしいと言えばらしい装い。だが、今までのような欲望に塗れた主の姿とはまるで違う。
「あれが…このパレスの……」
「…久しぶり」
右手をポケットに入れたまま、振り返ったのは秀尽の生徒がよく知る人物。二学期を持って赴任期間を終え、学園を去っていったあの人。
「丸喜先生…！？」
丸喜拓人だ。
「元気そうだね。君たちがこの場所へ潜入してくるだろうってことはわかってた。けど本来なら、こういう形で会いたくなかったよ」
「丸喜先生が…パレスの主なんですか？」
「パレス…」
「歪んだ欲望が形になった場所のこと…その欲望の主が貴方なのかってことですよ」
「ああ……君たちの言い方ならに習うなら、そうだね。僕がパレスの主だ。けど僕の場合、君たちの知るものとは少し異なるようだけどね」
パレスだけでなく、この世界全体を操作していること。それが大きな違いだった。
「…この世界は、丸喜先生が…？」
「そうだよ。これは僕が創った現実だ」
＿＿＿創った。
その言葉に身の毛がよだつ。得体の知れない不気味さがリティを襲う。一色若葉、奥村邦和が生き返り、モルガナが人間としての姿を得た世界。これは彼によって創られた世界だった。
「信じられないと思うけど、僕は人々が願う現実を叶える力を得たんだ」
「元に戻せ」
「そうです、こんな世界…」
そこまで言いかけて気付いた。なぜ自分はこの世界は『駄目』だって言うことができるのだろうと。ルブランで目にした光景は奇妙で、受け入れ難いものだった。だが、彼らは間違いなく幸せそうだった。
＿＿＿それなのに、なんで私は否定したいって思うの。
自分の気持ちなのに、言葉にすることが出来なかった。
「大丈夫、わかっているよ。君ならこの現実を受け入れてくれるって、信じているから」
「…なんで、そう言えるんですか」
「…君は元の現実がどれほど理不尽で残酷かを知っているからだ。そうだろう？」
リティは震える手を拳を握ることによって抑え込む。否定できない自分が、自分の心すらもわからない自分が、悔しくて堪らない。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
