第五百十七話 心を裂く結末 ページ13
「え…？」
「ありがとうございます！結果を残せて嬉しいです！」
インタビュアーと話している一人の少女。髪を一つに束ね、マイクに笑顔を向けている、誰が見ても可愛らしいという印象を抱くであろう少女だ。その姿はリティの知っている彼女に似ている。
「ジュニアの枠を大きく越えた演技、素晴らしかったです。もうすぐ高校に進学されますが、新体操の方は？」
「もちろん続けます！新体操で世界を獲るのが夢ですから！」
「ありがとうございます。最後に、このお気持ちを誰に伝えたいですか？」
「妹です！この会場にいるはずで…」
ふと、その少女の目がこちらを向いた気がした。
「いた！…すみれ！」
否、彼女は間違いなくこちらを見ていた。彼女の目が捉えていたのは。
「すみれ！お姉ちゃんやったよ！世界を獲るのは私たち姉妹の夢なんです。」
「やめて…」
彼女がすみれと呼んだのは。
「一緒に叶えようね！すみれ！」
Aが芳澤かすみと認識していた彼女だった。
「やめてッ！」
悲鳴にも似た怒鳴り声を彼女は上げる。「私、は…」と力なく地面へ蹲る彼女にリティは声を掛けきれずにいた。
＿＿＿いったい、どういうこと？
「芳澤さん、君は…」
クロウが彼女に声を掛けようとしたところ、謎の男の声が先に耳に届き、それを遮った。柔らかい声だった。
「わかってくれたかな。これ以上進んでも、心を引き裂く結末が待っているだけだよ。大人しく、『今ある現実』に帰って貰えないかな」
「心を…裂く、結末…」
弱々しい様子を見せるも、それは一瞬で。
「何を言っているか分かりませんし、帰るつもりもありません！」
そう強く言い放った。
「彼女の言う通り、僕たちも大人しく帰る気なんてない。こそこそ警告なんてしてないで、直接出てきたらどうです？」
「……わかった。下に降りてきてくれ。僕もそこへ向かう」
＿＿＿ぼく、って言った。
「ずいぶん素直に従ってきたね。ようやく主のお目見えかな？」
「かすみ、急がなくていい」
「お気遣い、ありがとうございます。でも、全然平気です！行きましょう」
「……『芳澤かすみ』ね」
先程の出来事についても十分な理解ができずにいたが、リティの心の内を支配していたのは主と思わしき声についてだった。それは聞き覚えのある声だった。
柔らかく、優しい声。彼になら何でも話したくなってしまうような、そんな。そんな声。
＿＿＿あの人の声に似ている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
