第五百五話 双葉の母親 ページ1
ルブランに到着すると、中から楽しそうな話し声が聞こえてきた。ほとんどの声は聞いた事のあるものだったが、ひとつ聞きなれない女性の声があったことがどうも気にかかった。
「…よし。」
意を決して、扉を開こうとしたその時。
「うわっ！なぁんだ、お二人さんか。」
「双葉。」
ちょうど中から出てきた双葉と鉢合わせした。その顔は心做しかいつもよりも明るいように見える。
「昨日ぶりだな。明智はお久しぶりですぅ。」
「…久しぶり。」
「…双葉、どこに行くの？」
吾郎に対する彼女の反応も気にはなったが、それよりもだ。彼女の母親が本当に存在するのか、それが気になる。会話の中でそれとなく探ってみよう。
「ちょっと買い物！みんなのためにデザートを買ってくるんだ。お母さんはモンブランで、そうじろうは… 」
「
そう言うと、双葉はこてんと首を傾げる。まるでお前は何を言っているのかというような反応だった。
「蓮もAも頭のネジどっか行っちゃったのか？まさか私のお母さんを忘れたとは言わないよな？」
「…双葉のお母さんは。」
精神暴走のせいで交通事故に遭い、亡くなったはず。そう言おうとする口を吾郎が手で塞いだ。「言っても無駄だ」彼の口が小さく動き、そう告げていた。
「っと、急いでるんだった！続きはまたな、A。明智、頭がふわふわしてるお前の婚約者殿を任せたぞ！」
急いで走り去っていく双葉の背中を目で追いかけ、
「ふわふわしているのは君の方だろ。」
と冷たく言い放った。
◇◇◇
今度こそ、ルブランの中へと入る。
「ああ、悪い。店、まだ開けてねぇんだ…ってAちゃん達か。あけましておめでとう。」
「あけましておめでとうございます、マスター…と。」
私は瞬時に違和感を見つけた。マスターの目の前に座る女性。かつて双葉のパレスで見たスフィンクス。いや、彼女の母親、一色若葉だった。
「あけましておめでとう。Aちゃん、今日も明智くんと一緒なのね。新年早々、青春してて羨ましいわ。うちの双葉にも、今年こそ春が来ればいいのだけど。」
「変な奴を連れてきたら俺が許さねえけどな。」
「まあ、惣治郎ったら。」
なんて幸せそうな空間なのだろう。ここに双葉が加わったら尚更だ。幸せな家族の風景を彼らの後ろに感じる。だが、やはりこれは異常だ。認めては、受け入れてはいけない。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
