彼の奮闘。 ページ13
.
さて数時間後。散々夜久に喝を入れて貰った黒尾はよろよろとした足取りで帰宅していた。
がちゃりと慣れた手つきで扉を開けて「ただいまー・・・」どこか疲れきった声をかける。
と、すぐさま「おかえりー!」バタバタと騒がしい足音共に返ってきた恋人の声。
「(おかえり、ってやっぱいいよなぁ)」
プロポーズ、なんて話をしていたからか。そっちの方に考えてしまい、頬を緩める黒尾。
Aはそんな黒尾に少し首を傾げつつも、「おかえり」ぎゅ、と抱きついた。
「・・・どうしたお前。いつもそんなに甘えねーだろ」
「新妻ごっこ」
「あほか」
ごっこってなんだよごっこって。
・・・俺としては、本当に新妻にほしいんですがね。
なんて言えるほど素直で器用ではない黒尾は、ぺろーんとAを引っペがし、「いいから飯にすんぞ」とリビングに突き進む。
いや何してんだ俺。今すげーナチュラルにプロポーズできるとこだったんじゃねぇの!?馬鹿か!!
もんもんとそんなことを考えていると、にやにやと気持ちわ・・・げほん。怪しげな笑みを浮かべたAが「じゃーん!」鍋を突き出してきた。
「・・・は?」
「肉じゃが!作ったんだよ!自分で!一人で!」
「いや、は?おま、マジでこれ作ったの?」
「マジで!」
ふんす!と自慢げに鼻息を荒くする彼女に、黒尾は純粋に驚いて目を見開く。
鍋の中にあるのは、前までのAならば絶対に作れなかったであろう綺麗な肉じゃが。
おぉ・・・、と半ば有り得ない気持ちでそれを見ていると、「私いいお嫁さんになると思わない?」ちらちらと黒尾を見ながら上目遣いでそう言うA。
「おー。マジですげーなお前。えらいえらい」
「ちょ、頭わしゃわしゃすんな・・・!!私だっていい年だし!ちょっとくらい料理できとかないと思って」
「お前洋食なら作れなくもねーだろ」
黒尾の的確なツッコミにぎくり。肩を揺らしたAは、オイル切れのロボットのようにギギギギ、とこちらを向いた。
「・・・だ、」
「あ?」
「だ、だって鉄朗和食好き、じゃん」
「・・・は、」
「て、鉄朗の喜ぶもの作りたかったんだよ悪いか!!」
半ば睨むように黒尾を見上げるAの頬は、ほのかに赤い。
────あ、なにこれ、やべ、
じわりと足元からはい上がってくるような感覚に黒尾は思わず愛しい彼女に手を伸ばして。
「結婚、するか」
.
824人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
初花love洸水哲蒼(プロフ) - とっても面白かったです!(*´ω`*) 番外編の短編心がポカポカになりました〜 (2016年3月20日 23時) (レス) id: d6c4fa5195 (このIDを非表示/違反報告)
星夜 - 完結からしばらくたってるのに、メッセージ書いてすみません!すごくおもしろくて、きゅんきゅんしました。あの、もしかして、もちづきさんって、ピクシブのこけし屋さんの作品見てたりします?似たような所がいくつかあったので。 (2015年7月24日 8時) (レス) id: 83dc7d9026 (このIDを非表示/違反報告)
クロヅキ - 完結お疲れ様でした。この作品に出合えて本当によかったっ!これからも応援しています!! (2015年4月30日 17時) (レス) id: c79d2db9c3 (このIDを非表示/違反報告)
リア充バルス - 完結おめでとうございます。私にとってこの小説はいじめられっ子の私の唯一の支えだったと思ってます。そして、チョコちゃんやyukaちゃんと仲良くなれたきっかけで大変お世話になりました!これからも応援していますね;_; (2015年4月29日 7時) (レス) id: 68591afdd0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーま - yukaさん» ホントですね!消してしまったんでしょうか… (2015年4月27日 1時) (レス) id: 52d7b185f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もちづき。 | 作成日時:2015年2月18日 17時