5：安い(N視点) ページ5
〜N視点〜
コンビニで買った安い缶ビールを煽りながら、出演者が安っぽい笑みを浮かべている番組を消して、貴方は唐突に一言呟いた。
「安い。」
いや、確かに自分も同じことを思いながらその番組を眺めていたが、テレビに出ている側としてその言葉を発してしまうのはいかがなものか。
そう心の中で冷静に突っ込んでいると、貴方は自身の想像の斜め上をいく言葉を発した。
「ニノの笑顔と違って、あいつらの笑顔は安い。」
笑顔が安い。
そう、芸術的センスに長けている彼が放ったこの言葉はかなり興味深いが、問題はそこではない。
何故、自分の笑顔は彼らの笑顔と違い、安くないと思うのかという点が問題なのだ。
「いや、私も一応アイドルですし、作り笑い位しますよ…?」
自分もこの男も、十代前半の頃からアイドルとして活動しているのだから、作り笑い位しているのに何故、安くないと言えるのだろうか。
「ニノは作り笑いでも、安くねぇんだよ。なんか、こう…上品で、可愛くて、俺の好きな顔。」
そんなことを真顔で言ってのけるこの男は、かなり肝が据わっているか、はたまた、かなりの大馬鹿野郎かのどちらかだろう。
そう皮肉めいたことを必死で考えても、顔は火照る一方だった。
〜終わり〜
〜あとがき〜
「紅」と書いて「あか」と読む、紅百合です。
今回はNさんの笑顔が誰よりも輝いて見えるOさんのお話です。
自分の愛しい人の笑顔を見ると、他の人の笑顔は安っぽく見えるのかもしれません。
お読み下さり、有難う御座いました。
〜紅百合〜
6：お願い(N視点) ※あとがきに新年のご挨拶が御座います。→←4：馬鹿(N視点)
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作者名：紅百合 | 作成日時：2017年9月30日 20時
