JUMPの闘病生活。5 (ページ10)

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勝負ページ10

涼介サイド

伊野尾先生「ここだよ。意外と広いでしょ？」

涼介「うん」

広い空間に、ベッドは１つ。

小さなテレビと、DVDが10個くらい置いてある。

伊野尾先生「副作用がひどいと思うから、辛いときは今まで通りナースコール押して」

涼介「わかった」

伊野尾先生「抗がん剤は誰かが持ってきて説明とかしてくれるから、よく聞くこと。検査の時間になったら呼びに来るね」

涼介「はーい」

伊野尾先生「それまでは、普通に過ごしててね」

涼介「うん」

伊野尾先生は、「それじゃ」と言って部屋を出た。

俺は、ベッドにボフッと身を沈める。

涼介「俺、ひとりぼっちだ……」

自分で呟いたその言葉が反響して、より寂しさを感じさせた。

涼介「がんばろ！そうすれば出られる」

弱気になっている俺に言い聞かせた。

侑李だって、頑張ったんだ。

だから、俺も頑張らないといけないんだ。

涼介「漫画、読もうかな……」

返事がないとわかっているのに、俺は声に出した。

笑いたい気分だった。

無理にではなくて、心の底から笑いたい。

涼介「やっぱこれかな」

伊野尾先生が棚の上に並べてくれた漫画の中から、お気に入りの１冊を手に取った。

侑李は「単行本を全巻揃えればいいのに」と言うけど、俺はたくさん話が載っている方が好きなんだ。

安いのに楽しめるから、お得な感じもするし。

俺は、何度も読んでところどころしわしわになっているページを開く。

そのとき、紙面のページの上に、水滴が落ちた。

涼介「あれ、何で？俺……」

右手の甲で目を擦ると、少量の水滴がつく。

涼介「……俺、泣いてる」

自分が泣いていることに、ようやく気づいた。

俺のしゃくりあげるような嗚咽が、聞こえてくる。

涼介「怖い、よ」

勝手に口が動いた。

有岡先生には、怖くないって言ったけど。

伊野尾先生や侑李には、大丈夫って笑ったけど。

怖い。

これが俺の本音だった。