JUMPの闘病生活。5 (ページ8)

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勝負ページ8

有岡先生サイド

涼介「ねえ、先生。答えたくないならいいけど、何が、先生をそんなに苦しめているの？」

その言葉で脳裏に蘇ったのは、かつて白血病で入院していた、忘れられない子の笑顔。

普段は胸の奥の方にしまっておいて、弱気になったときに引っ張り出すその記憶。

今の涼介になら、話してもいいかもしれない。

俺は深呼吸をして、乱れた呼吸を整える。

落ち着いて話せる状態になるまで、涼介は俺の背中をさすって待っていてくれた。

涼介「話してくれるの？無理しなくていいんだよ？」

有岡先生「してねぇよ。あのな、涼介。前に、俺が研修医だったとき、男の子が死んじゃって、それで院内学級の先生になったって話したろ？」

涼介「うん」

有岡先生「その子も白血病で、移植することになったんだ。頑張って、やっと移植を受けられるってときに、感染症にかかった。骨髄を破壊したあとだったから、免疫力がすごく低下していて、体が負けちゃったんだよ」

涼介「それで死んじゃったんだ」

有岡先生「うん、だから、俺……」

視界が滲んでいく。

だめだ、せっかく泣き止んだのに……。

ポロっと一粒涙がこぼれ落ちたら、堰を切ったように溢れ出す。

有岡先生「俺、怖くて。その子、無菌室行って、元気だったのに、急に、死んじゃったから。
涼介も、涼介だって、いなくなっちゃう、かもしれないから」

涼介「俺、絶対に死なない。また笑顔で有岡先生とドライブ行くって、約束したでしょ？俺、約束守るタイプだから、信用してよ」

絶対に死なないって言っても、死んじゃうときは死ぬんだよ。

あっけなく、呼吸ができなくなって、心臓が止まって、死んじゃうんだよ。

あいつだって、死なないと言って笑ってた。

なのに、俺が知らない間に、死んでいたんだ。

でも。

有岡先生「絶対、死なないで。また、戻ってきて。お願いだから……」

そう言わずにはいられなかった。

それが無駄なことであると知っていても、「死なないで」と言ってしまうものなのだ。

涼介「大丈夫だよ、ね？だからもう泣かないで？先生には笑っていてほしいの」

有岡先生「りょう、すけ」

涼介「うん。またそうやって、先生に名前呼んでもらえるように、頑張るね」

涼介の方が怖いのに、俺よりずっと声が震えているのに。

俺は、涼介に無理させていて、心配させて、迷惑をかけている。

有岡先生「ごめん」

涼介「んーん、話してくれてありがとう」

涼介が微笑んだから、もっと涙が出た。