JUMPの闘病生活。5 (ページ41)

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有岡先生サイド

涼介「先生。俺、ほんとはずっと怖かった」

遠くを見つめた涼介の瞳が、景色を映していた。

涼介「死ぬって何なんだろう。……生きるって何なんだろうって、ずっと考えてたんだ」

有岡先生「生きる意味か。難しいな」

涼介「ね。……答えは、見つからなかったよ」

風が、涼介の入院着をなびかせる。

涼介も俺も前髪が揺れている。

涼介「この話を、薮先生にもしたんだ。そしたらね、『それが答えだろ』って言われた」

有岡先生「なるほど……」

それが答えだろ、か。

俺には思いつかなかった。

言われてみれば納得できる。

有岡先生「高校生くらいだったかな。俺も、考えたことがある。生きる意味、死ぬ意味。大人になればわかるだろうと思って、結局わからないまま途中で諦めたけど」

涼介「有岡先生は、高校生の頃はもう医者目指してたの？」

有岡先生「うーん、中学生の頃には、医者になるんだろうなって思ってたかも。勉強、そんなに好きじゃなかったけど」

父親が医者なのだから、自分も医者にならないといけないものだと、小学校の高学年くらいのときに悟った。

誰かに言われたわけではないけど、そんな雰囲気が漂っていたからだ。

涼介「先生。これから話すこと、笑わないで聞いてくれる？」

有岡先生「いいよ。笑わない」

涼介が視線を俺のほうに向けた。

涼介「俺、高校行きたい。全然勉強できないけど。高校行って、偏差値が高い大学行って、医者になりたい！」

有岡先生「……この話で笑えるわけないだろーが」

涼介の目はいつになく真剣で。

幼かった涼介も、治療を乗り越え、夢に向かって必死になっているのが、嬉しくてたまらなかった。

有岡先生「応援するよ。俺だけじゃなくて、涼介のまわりにいる人たち全員が、きっと涼介のこと、応援していると思う」

涼介「ありがと、先生。医者になれなくても、頑張って院内学級の先生になれたらいいなって、先生見てて思うよ」

有岡先生「そう言ってもらえると嬉しいよ」

夢を諦めた俺だけど、涼介のためになったのかな……。

本当はずっと、手術をして、いろんな人に「治してくれてありがとう」と言われている伊野ちゃんが羨ましかった。

でも、涼介は―――

『有岡先生だって、俺のお医者さんだよ』

『救ってくれて、ありがとう』

『俺、有岡先生みたいな人になりたい』

そう言ってくれて。

俺は「感謝されたい」というもう一つの夢は叶えられたのだと、自信を持つことができた。