JUMPの闘病生活。5 (ページ23)

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勝負ページ23

侑李サイド

部活後に、海と一緒に来た神社。

学校から結構近くにあって、15分くらいで着いた。

海「神頼み、した方がいいよね、きっと」

侑李「そうだね。しないよりはした方がいいよ」

毎年家族で初詣に行っている海はいろいろ知っていて、何も知らない僕に「ここでもお辞儀するんだよ」とか「端っこ歩くんだよ」と教えてくれた。

僕の記憶では、おそらく神社に来たのは初めてだと思う。

500円玉をお賽銭箱に投げ入れて、僕は海の真似をした。

お辞儀をして、パンパンと手を叩いて、ぎゅっと目を瞑る。

海「試合で勝てますように」

隣から聞こえてきた声に、僕も続く。

侑李「優勝できますように」

海に負けないように、大きな声で言った。

そして、心の中でもうひとつの願い事を唱える。

――神様。涼介を生かしてください。

――涼介を、奪わないでください。

移植が成功して涼介が退院できますように、と心からの願いを込めた。

瞼をゆっくり上げると、海もちょうど目を開くところだった。

海「ごめん、待ってた？」

侑李「ううん」

海に合わせて、僕も一礼をする。

長く、長く、頭を下げた。

海「よし、これで神頼みはオッケー！あとは練習するのみだね！」

侑李「うん！」

海が、「はいっ」と言って握り拳を僕の前に突き出してくる。

僕はそれに、自分の拳をコン、とぶつけた。

涼介以外の人とこんなことをしたことがない僕は、なぜか海の目を見られなくなった。

『恥ずかしい』と『照れくさい』がまじって、どちらにも似つかない感情が生まれた。

海「じゃあ、そろそろ帰る？」

侑李「そうだね。帰ろう」

海のお母さんやお父さんが心配するかもしれない。

僕には、帰ったら家に親がいて、「おかえり」と言ってくれることなんてないけど、海は違う。

それがなんだか羨ましくて、悲しくなった。

侑李「じゃあね、気を付けて」

海「また明日。侑李も気を付けてよ」

手を振って、僕は海に背を向ける。

親はいないけど。

涼介が「おかえり」と言ってくれるし、伊野ちゃん先生が、僕の〝お父さん〟になってくれている。

寂しいことは、何もないはずなのに。

本当の両親がいないこと。

それがたまに、僕の心を締め付ける。