勝負 ページ17
涼介サイド
コンコン、とノックの音が響いた。
伊野尾先生でも有岡先生でもないことは、その音でわかった。
一体誰だろう。
涼介「はーい」
看護師さんかな？ と思いながら返事をする。
扉が開いて、
「久しぶり」と制服姿の侑李が微笑んだ。
涼介「侑李……」
泣き笑いのような表情を浮かべた侑李が、こちらに歩いてくる。
侑李「遅くなって、ごめんね」
涼介「ううん。来てくれてありがとう、侑李」
侑李は、へへっと言いながら涙を流した。
「大丈夫だよ」って抱き締めてあげたかったけど、ただの風邪でも重症になってしまう今の俺には、それができなかった。
涼介「侑李も怖いんだよな。わかってるから」
副作用のせいで、喉が痛む。
でも、それに気づかないふりをして話し続けた。
涼介「俺、死なねぇから。絶対治してまた抱きしめてやるから、その時まで涙ためとけよ」
うんうんと頷いてはいるけど、声を出さずに泣く侑李。
侑李「僕、泣いてばっかりだ……」
涼介「俺のために、泣いてくれてんの？」
侑李「当たり前、でしょ？」
涼介「そっか。ありがとな」
泣き止ませようと言ったのに、侑李はもっと泣いてしまった。
侑李の泣き顔をただ見ていることしかできないなんて。
我慢できなくなって、俺はベッドから降りた。
本当は、こんなことしたらダメだけど。
制服の袖で涙をぬぐっている侑李を、そっと抱きしめた。
侑李「涼介……うぅ、っく、りょ、すけぇ……」
涼介「大丈夫だよ、俺、元気だよ？ 侑李を残して死ぬわけないじゃん？」
侑李「こわい、こわいよ」
涼介「正直ね、俺も怖い。でも、手術が不安な訳じゃないんだ。……死んじゃうことが、侑李も怖いんだよね。俺は生きる」
侑李の頭を撫でてやる。
かつては今の俺と同じで髪の毛がなかったはずなのに、そんなことを感じさせないきれいな髪が指に触れた。
涼介「試合、もうすぐで決勝なんだって？ 侑李も死なないように登下校は注意してよ？」
侑李「うん」
侑李は活躍しているんだと、伊野尾先生が教えてくれた。
そして、侑李には言ってないけど、決勝戦の日が俺の移植の予定日であることも。
この骨髄破壊的前処置が上手くいくかで、移植の予定日は変わるのだが。
侑李「僕、試合、勝つから。涼介も、勝ってね」
涼介「わかってるって」
侑李は、俺の背中をトントンと2回だけ優しく叩いた。
不思議だった。
侑李といると、なぜだかわからないけど、�犹爿瓩紡个垢覿寡櫃�薄まるのが。
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作者名：J | 作成日時：2020年9月29日 14時
