JUMPの闘病生活。5 (ページ16)

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勝負ページ16

侑李サイド

どうすればいいのか、わからないよ。

学校からの帰り道、僕は近くの公園に寄って、ブランコに座った。

小学生や幼稚園児の子達が、楽しそうに遊んでいた。

抗がん剤治療が辛いことを知ってるから、余計にわからなくなる。

涼介は、弱いところを見せたくないタイプだ。

弱った姿を見られたくない、と思うだろう。

僕は涼介の痩せ細った姿なんか見たくないし、それを見るのが怖いから、こうして逃げているのかもしれない。

侑李「どうしようかな……」

そう呟いてみる。

家に帰るのも、病院に行くのも嫌な気分だった。

「病院に来れば？」

隣からそんな声が聞こえてきて、僕は顔をあげ、その人を見た。

侑李「大ちゃん先生……。いつからいたの？」

有岡先生「1分くらい前からいたけど？侑李、おまえ、大丈夫か？」

先生は、「はいっ」とオレンジジュースを１本渡してくれた。

「ありがとう」と受け取ったけど、僕はそれを飲まずに、リュックサックのポケットに入れた。

有岡先生「来いよ、病院。来るだけでもいいから」

侑李「うん、まぁ、また今度」

僕は下をむいたまま、ごまかすような返事をする。

有岡先生「逃げてるのなら、もし逃げてるのなら、来て」

先生が、僕の前に手を差し出した。

侑李「逃げるのは、ダメ？」

有岡先生は、困ったような顔をして、「ああ」と頷いた。

侑李「何が悪いの？逃げることの何が悪いの？世界でいちばん大切な人の死から目を背けることも、苦しんでいるところを見たくないってことも。だって、それって、普通のことでしょ？」

有岡先生「普通のことだよ。でも、それでも、逃げたらダメ。後悔するのって、すごく辛いんだよ？」

「だから来て」と先生が僕の手に自分の手を重ねて言った。

有岡先生「涼介の移植が失敗したときのことも、考えないと。最悪のことでも、こうなるかもしれないって。今は会えるんだから、生きているんだから、話したいことを全部話して、笑って。涼介と二人で今を生きるんだよ！」

大ちゃん先生が、涙ながらに言う。

潤った瞳で、まっすぐに見つめてくる。

侑李「先生……」

先生は、自分が逃げて後悔したから、僕にはそうならないでほしいと思ってくれているんだ。

家族でもないのに、それくらい、僕と涼介のことを考えてくれているんだ。

侑李「僕、行こうかな」

大ちゃん先生が、来いよと言ったから。

僕の背中を押してくれたから。

僕は涼介のところに行くよ。

自分のためにも。