勝負 ページ2
有岡先生サイド
有岡先生「伊野ちゃん、休憩したら？」
伊野尾先生「したよ、さっき」
有岡先生「したって5分もしてないでしょ？ それは休憩には入らないから」
左手で菓子パンをかじりながら右手でシャーペンを動かし続ける伊野ちゃん。
そのうちぶっ倒れるんじゃないかと、見ているこっちが不安になってくる。
伊野尾先生「骨髄バンクに照合をかけた」
有岡先生「涼介？」
伊野尾先生「うん。侑李からの移植も無理だし、あいつらの両親も多分無理だろ？ だから」
ドナーになるのには、いろいろな条件がある。
侑李はそれを満たしていない。
あいつの両親が提供してくれる可能性は限りなくゼロに近いから、涼介は骨髄バンクに頼るしかない。
有岡大貴「誰かいないかな、ドナー」
こんなこと呟いたって、何も変わらないけど。
無意識のうちに漏れたその言葉が、頭の中で何度も響く。
伊野尾先生「大ちゃん、院内学級はいいの？」
有岡先生「ああ、人手は足りてるから別にいいよ」
伊野尾先生「じゃあ骨髄移植の絵書いてくれない？ 説明する用の分かりやすいやつ。俺が描くと下手だから」
何故そうなる、と内心思いつつ、俺は伊野ちゃんの隣の、
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伊野尾先生「
伊野ちゃんは、あくびをしながら俺に紙を渡す。
有岡先生「寝ろよ」
伊野尾先生「だってまだ寝るような時刻じゃない」
パソコンの横に置いてあるデジタル時計には 20:45 と表示されていた。
確かに大人が就寝するような時間ではないけど、伊野ちゃんは寝るべきだと思う。
話し方がいつもよりゆっくりだし、何より目が超とろーんとしているから。
俺は黙って、胸ポケットから取り出したボールペンで骨っぽい形を書いていく。
有岡先生「かみ……」
せわしなく動いていた伊野ちゃんの手が止まったのが見えて、仮眠ってことで寝れば？ と言いかけた俺は、言葉を飲み込んだ。
伊野ちゃんが頬杖をついたまま目を閉じている。
有岡先生「こいつも涼介みたいだな」
俺は、自分にしか聞こえないくらいの声でそうひとりごちた。
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作者名：J | 作成日時：2020年9月29日 14時
